QRコード決済の普及に向けた課題とは?:キャッシュレス普及の切り札となるか?(4/4 ページ)
世界に比べて遅れている日本のキャッシュレス決済。その普及に向けて切り札として期待されているのがQRコード決済だ。しかし、そこには課題も数多い。決済関連に詳しいカンムの八巻渉社長による寄稿をお届けする。
日本でQRコード決済を普及させるには?
日本政府は、「2027年までにキャッシュレス比率を40%に上げる」という目標を掲げている(2017年時点で約18%)。そのためには、加盟店側のコストを安くし、今までキャッシュレス決済に対応していなかった加盟店を増やす必要がある。
そこでQRコード決済が注目されているわけだが、中途半端なコスト削減策だけでは意味がない。日本のクレジットカードの加盟店手数料は平均3%といわれているが、中途半端に2%とかではなく、0.5%程度まで劇的に落とさないと普及しないだろう。
というのも、ある程度繁盛している飲食店やサービス店からすると、仮にキャッシュレス手段を導入したところで、席数や店員数の上限が存在し、1店舗あたりの売上には限界があるため、売上向上の効果があまり期待できないからだ。逆に手数料がそこまで下がれば、売上向上期待がなくても、レジの現金管理コストと比較して割安と感じる加盟店も増えるだろう。
劇的な手数料削減には、現金からデジタル通貨への移動コスト、つまりはチャージ費用を下げる必要があると考えている。
また本質的な課題として、仮に店舗がキャッシュレス決済手段を導入したとしても、現金ではなくキャッシュレスを使ってもらうように誘導するインセンティブ設計が必要だ。「レジの現金管理コストが下がる」という話もあるが、多くの店は現金決済がなくなるわけでもない。そんな中では、少しでも手数料がかかるキャッシュレス決済手段を勧める理由がない。
実は、日本の大手小売店や飲食店のほとんどは、何らかのキャッシュレス決済手段を既に導入しており、金額ベースで90%はキャッシュレス決済できる状態にあると言われている。90%も「使える」のに、18%しか「使っていない」ことが本質的な問題だ。もちろん地方と都会で状況に差があるという問題や、加盟店をどうやって増やすのかも問題だが、加盟店が導入した後に消費者にどう使ってもらうか? という議論が足りていない。
執筆者プロフィール カンム 代表取締役社長 八巻渉
2009年に慶應義塾大学 理工学部 情報工学科を卒業後、人工知能や自然言語処理といった分野の研究開発を行うStudio Ousiaに入社。2011年にカンムを設立。自社サービスの運用、証券会社のWebサイト構築・アクセス解析、大手飲食チェーンのデータ解析等を行う。データ解析・拡張が得意。2013年から大手クレジットカード会社と提携し、「Card Linked Offer(CLO)」を運営。2016年には、アプリから誰でも1分で作れるVisaプリペイドカード「バンドルカード」をリリースし、若年層を中心に約80万インストールとなっている(2018年10月現在)
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