松屋と吉野家でこれだけ違う 「もうかる立地」の方程式とは?:ネット上の「立地」も大事(2/6 ページ)
「あの飲食店は立地が悪い」とよく言われるが、そもそも「良い立地」と「悪い立地」は何が違うのだろうか。知ってるようで意外と知らない飲食店の立地戦略を読み解いてみよう。
松屋と吉野家で違う出店基準
皆さんが街を歩いていてよく目にする牛丼店。あれだけたくさんあると「何となくどんどん出店しているのかな?」などと思ってしまいますが、決してそんなことはありません。牛丼店に限らず多店舗展開をしているチェーン店には、各社それぞれの立地選定を行う基準が存在します。
例えば松屋。松屋の物件募集要項を公式Webサイトで確認するとこのように書いてあります。
(1)店舗面積目安:25〜40坪(ビルインの場合)
(2) 1日乗降客2万人以上の駅から50メートル以内。人目につくところ
(3)事業所街やオフィス街の飲食店舗の少ないところ
(4)原則1階路面店舗(地階や2階だけの単独出店は不可)
(5)原則24時間営業
一方で「吉野家」はどうなっているのでしょうか。同様に物件募集要項を公式Webサイトで確認してみましょう。
(1)店舗面積:25〜35坪(ビルインの場合)
(2)間口:6メートル以上(4.5メートルより可)
(3)乗降客5万人以上の駅前
(4)乗降客10万人以上の駅周辺
(5)繁華街で人通りの多い場所
(6)原則24時間営業
このように一見すると同じようなビジネスモデル、立地、出店形態だとしても、自社なりの出店基準を持っていることが分かります。
松屋と吉野家の物件募集要項にある店舗面積を見る限りでは「牛丼チェーンはどちらも最低25坪以上の面積が必要」「吉野家の方が松屋よりも乗降客が多い駅前立地を狙っている」「吉野家は間口の広さを重要視している」などの特性が見えてきます。
次に、物件募集要項の乗降客基準を「駅近く」「駅周辺」で見てみると、松屋は1日乗降客数2万人以上を基準にしているのに対して、吉野家は10万人以上(駅前は5万人以上)を基準としています。このデータだけを見ると松屋の方が少ない乗降客数でも出店できるということになります。
では、この両者のビジネスモデルにはどういった違いがあるのでしょうか? その1つにメニューカテゴリーの違いがあります。松屋には吉野家には無い「うどん」「鉄板焼き肉」「ハンバーグ」などのメニューカテゴリーがあります。メニューカテゴリーが多いということは、それだけ多くの「利用動機」(より多くの客層をターゲットにできるという意味)があるのです。そのため、理論上は乗降客が少なくても入店率を高めることができます。このように、ビジネスモデルを変えることで競合店が出店しないエリアを狙う戦略もあります。
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