アジア攻めるNetflix、日本作品は生き残れるか 首脳部に直撃: 映像ジャーナリスト数土直志が問う(3/7 ページ)
映像配信の帝王、Netflixのアジア戦略に密着。シンガポールのイベントでは日本コンテンツの微妙な立ち位置が浮き彫りに。幹部は日本の出版社買収にも関心抱く。
ディズニーとワーナー、Netflixに“宣戦布告”
同社の市場の支配力は強く、映像配信のグローバルビジネスの大勢は固まったかに見える。しかし鉄壁に見えるそのビジネスも実際は確実なものでない。18年にウォルト・ディズニー、そしてワーナーメディアのハリウッドの2つの巨大企業が、これに挑戦する宣言をしたのだ。
ディズニーは定額課金見放題サービス「Diseny+」を19年下半期に開始すると発表。ここにはディズニーの実写・アニメーション、マーベルやルーカスの人気作品が並ぶ予定だ。同時にNetflixからグループの有力タイトルの引き上げも明らかにしている。狙いが同社への対策であることは明白だ。
6月にAT&Tとタイムワーナーの経営統合で生まれたワーナーメディアも同様だ。19年秋に新たな映像配信のサービスをスタートする。ワーナーブラザース、ターナー、HBOといった有力企業が抱えるコンテンツには「バットマン」から「ゲーム・オブ・スローンズ」まで、こちらも人気作品がめじろ押しだ。ハリウッドメジャーは、新たな映像エンタテイメントの主戦場である映像配信ビジネスをNetflixに独占させるつもりはないようだ。
Netflixの歴史は1997年までさかのぼるが、配信ビジネスのスタートは2007年と意外に短い。わずか10年で築き上げられたのであれば、同じ期間でそれを失うことは理論的にはあり得る。それがインターネットビジネスであるし、盛者必衰はこれまでも繰り返されてきた。
世界中が作品の「生産地」で「消費地」
しかし総合的にみれば、それでも映像配信ビジネスの最前線に立つのはNetflixだ。先行者によるシェアの大きさ、いち早く築かれたグローバルネットワーク、さらに次々に繰り出す戦略とスピード感が強みである。シンガポールの「See What's Next: Asia」もその1つだ。いち早くアジアを次の戦略の鍵とする先見性がある。
Netflixの強さは6000万世帯という米国内の圧倒的な契約数以上に、実は海外にある。それは同社がグローバル時代に合わせて築いた新しいコンテンツ供給の仕組みそのものだ。
この仕組みは、「分散型コンテンツ創出」とでも表現できる。これまでの米国のグローバルメディアのビジネスフォーマットは、米国で生まれたコンテンツを米国企業が築いたグローバルネットワークに流し込むものだった。つまり上流に米ハリウッドが位置して、そこから世界各国にコンテンツを供給する垂直型だ。
一方でNetflixのコンテンツは米国だけで作られている訳ではない。世界各国でその地域のスタッフが番組を作り、世界に配信される。
つまり「米国→世界」だけでなく、「日本→世界」、そして「インド→世界」「ブラジル→世界」「ドイツ→世界」といったコンテンツが並行して相互に流通するシステムが構築されている。世界中がコンテンツの生産地であり、同時にコンテンツの消費地なのだ。
例えば日本のアニメはそこに入り込んだ。日本で作られた作品が世界中に時差なく届けられ、そこにハリウッド映画との差はない。
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