ゴーン事件を「西川の乱」だと感じてしまう、これだけの理由:スピン経済の歩き方(3/7 ページ)
カルロス・ゴーン前会長の逮捕で、日本中に衝撃が走った。有価証券報告書で役員報酬の一部を少なく記載した容疑で逮捕されたわけだが、この事件について、筆者の窪田氏は「西川の乱」ではないかと見ている。その理由は……。
不正発覚時に「ひとり会見」の意味
まず、(1)の『完成車検査不正発覚時に「ひとり会見」』から見ていこう。先ほどの記事内で詳しく分析しているので興味のある方はぜひお読みいただきたいが、実はあの問題が発覚した際、西川社長はたった一人で報道陣の前に現れた。不祥事会見は通常、役割を決めて複数人で登壇することが多い。どんなに頭のいい人間でも数十人の記者から質問攻めにされるので、失言や事実誤認のリスクが高まるからだ。そういう意味でも、かなり独特だが、それよりも異彩を放っていたのは、西川社長の「態度」だ。それはこの一文に全て集約されている。
『西川社長は会見で頭を深々と下げることはなく、「謝罪会見」とは一線を画した』(産経新聞 10月7日)
では、わびる気ゼロの西川社長はたった一人で、世間に何を訴えたのかというと、以下のようなメッセージだ。
「検査そのものは確実に行われており、安心・安全に使っていただける」
要は、そんなに大騒ぎするような話ではないんですよ、と説明していたのである。西川社長としてはどうしても自分の口で言いたかったのかもしれないが、このようなメッセージなら経営トップがわざわざ登壇する必要はなかった。いや、むしろ登壇すべきではない。
トップが出れば、世間は経営にも直結する大きな問題だと思う。そこで、頭を下げないならば、先ほどのような嫌味を書かれる。つまり、ボヤで済ませたいのに、わざわざトップがあらわれたことで大火事扱いされてしまったのだ。こういうケースの場合、まずは担当役員の対応でとどめておいて、同様の不正が繰り返されたり、再発防止策が固まった段階で、はじめてトップが出るというのが賢明だ。
では、東大卒で頭がキレる西川社長はなぜ出なくていい局面で、たった一人で登壇する選択をしたのか。
いろいろなご意見があるだろうが、筆者は社内の「反・西川派」に対する「牽制」という意味合いもあったのではないかと見ている。
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