「日本が嫌い」になる外国人を増やす、穴だらけ改正入管法の欺瞞:河合薫の「社会を蝕む“ジジイの壁”」(5/5 ページ)
外国人労働者の受け入れを拡大する入管難民法などの改正案が成立。「移民政策ではない」とする矛盾を抱えて成立した法案には問題が多い。外国人を「よそ者」扱いする社会のままでは、日本を嫌いになる外国人が増えるだけではないか。
文化や言語も異なる異国で暮らすのは、想像以上の壁があります。
ただ単に「なんか困ったことがあったら、相談に来てね」というだけではダメ。どんなに母国で優秀な職員でも、日本にはネットワークがない。「きっとここは困るだろう」とか、「ここには支援が必要になるだろう」と、先回りしてサポートをしなければならないことを、いったいどれだけの日本人が理解しているでしょうか。
残念なことに、日本人は外国人旅行者には優しいのに、外国人労働者は「よそ者」扱いする。
私は「外国人を受け入れる」こと自体には賛成です。
いろいろな人がいた方が、生活は豊かになります。学びもあります。でも、そのためには「労働力」としてではなく、「一緒に暮らす生活人」としてのコンセンサスを、政府、企業、そして私たちが持たない限り、ムリです。
法案そのものも内容スカスカで問題だらけだし、産業界は来年4月の新制度開始に向け、外国人労働者が働きやすい環境づくりを急ぐと報道されていますが、私たちが「自分たちの問題」として関心を持たない限り、日本を嫌いになる外国人は増えるばかりです。
河合薫氏のプロフィール:
東京大学大学院医学系研究科博士課程修了。千葉大学教育学部を卒業後、全日本空輸に入社。気象予報士としてテレビ朝日系「ニュースステーション」などに出演。その後、東京大学大学院医学系研究科に進学し、現在に至る。
研究テーマは「人の働き方は環境がつくる」。フィールドワークとして600人超のビジネスマンをインタビュー。著書に『他人をバカにしたがる男たち』(日経プレミアシリーズ)など。近著は『残念な職場 53の研究が明かすヤバい真実』(PHP新書)、『面倒くさい女たち』(中公新書ラクレ)
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