「南青山の児相反対派」をボコボコに叩く、そんな風潮がよくない理由:スピン経済の歩き方(5/6 ページ)
南青山の児童相談所建設をめぐって、議論が紛糾している。「児相ができれば青山ブランドが棄損する」といった反対派に対して、「口撃」する人が多いように感じるが、こうした風潮はどうなのか。筆者の窪田氏は、よろしくないと主張していて……。
時代錯誤な「児相観」から脱却できない
では、なぜ日本人はそのように時代錯誤的な「児童相談所観」からなかなか脱却できないのかというと、「不幸な子どもを社会で協力し合って育てていく」という考えが希薄だからではないか、と個人的には考えている。
本連載の『日本の親が子どもを「モノ」扱いしてしまう、根本的な理由』という記事で詳しく紹介したが、日本は諸外国に比べて際立って「親子心中」が多く、児童虐待対策に力を入れてこなかった歴史的事実がある。背景にあるのは、近代以前から続く子どもの人身売買が象徴する、「子どもは親の所有物である」という思想だ。
どんなに虐待を受けても、どんなに貧しくても、基本的に子どもはその親の「モノ」なので、アカの他人がとやかく言うことではない。このような「呪い」にも似た日本人の「子ども観」が、ガリガリに痩せて、明らかに虐待されているような子どもを「もう少し様子を見よう」と見殺しする悲劇を招いているのだ。
少し前、生活保護を受ける子どもを学習支援するNPO法人を立ち上げた渡辺由美子さんという方の記事を読んだ。なぜそのような活動をやろうと思い立ったのかというと、英国でお子さんを小学校に通わせた経験からだという。
「英国は階級社会。それだけに、生活困窮者の子どもが惨めな思いをしないよう、学校やPTAがバザーなどで必要なお金を集めて、分け隔てなく教育が受けられる仕組みが出来上がっていた」(日本経済新聞 2018年6月25日)
翻って日本はどうか。「子どもは地域社会全体で育てる」のは、日本ではスローガンのようによく語られる割に、実行しているのは渡辺さんのように問題意識のある「個人」だけだ。地域社会は「生活困窮者の子ども」が近寄るだけで、やれ不安だ、やれブランドが低下すると、ハナから育てる気がない。
それどころか、「生活困窮者の子どもは、自分の暮らしとのギャップに寂しい思いをするから、オシャレな青山には近づくなよ」と真顔で訴えるような人もいる。
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