「南青山の児相反対派」をボコボコに叩く、そんな風潮がよくない理由:スピン経済の歩き方(6/6 ページ)
南青山の児童相談所建設をめぐって、議論が紛糾している。「児相ができれば青山ブランドが棄損する」といった反対派に対して、「口撃」する人が多いように感じるが、こうした風潮はどうなのか。筆者の窪田氏は、よろしくないと主張していて……。
ブーメランで「日本人」に突き刺さる
なぜ「世界一のおもてなし」とか「世界一親切な国民」とか、自分たちの“いい人ぶり”をやたらと自画自賛する我々日本人が、「不幸な子ども」にはここまで冷たいのか。
サイコパスとかでないとしたら、そこには「子ども」に対してひずんだ考え方があるとしか考えられない。それこそが先ほど申し上げた「子どもは親のモノ」という「呪い」ではないか。
多くの日本人にとって、他人の子どもは「他人のモノ」に過ぎないので、どんなに虐待を受けようとも、どんなにSOSを発信しても基本的に興味が持てない。
そのような人々にとって、「児童相談所」とは、「得体の知れないアカの他人のモノ」がウジャウジャしている不気味な施設になってしまう、というのは容易に想像できよう。
そんなのはお前の妄想だと思うかもしれないが、では、これまで見てきたように、日本中で「児童相談所」が嫌がられている事実をどう説明するのか。
南青山の反対派住民の主張は「差別意識」が丸出しだ。自分たちだけは特別だという「選民思想」にもとらわれている。だが、ちょっと冷静になってみると、それらはすべて日本人がよく指摘される「悪徳」ではないか。
南青山の反対派住民を叩けば叩くほど、それらの批判はきれいな放物線を描くブーメランとなって我々に突き刺さる。まずはその「醜い現実」を認めないことから始めるべきではないか。
窪田順生氏のプロフィール:
テレビ情報番組制作、週刊誌記者、新聞記者、月刊誌編集者を経て現在はノンフィクションライターとして週刊誌や月刊誌へ寄稿する傍ら、報道対策アドバイザーとしても活動。これまで200件以上の広報コンサルティングやメディアトレーニング(取材対応トレーニング)を行う。
近著に愛国報道の問題点を検証した『「愛国」という名の亡国論 「日本人すごい」が日本をダメにする』(さくら舎)。このほか、本連載の人気記事をまとめた『バカ売れ法則大全』(共著/SBクリエイティブ)、『スピンドクター "モミ消しのプロ"が駆使する「情報操作」の技術』(講談社α文庫)など。『14階段――検証 新潟少女9年2カ月監禁事件』(小学館)で第12回小学館ノンフィクション大賞優秀賞を受賞。
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