ポスト平成の“ブラック企業”に悪用される? 「働き方改革関連法」に残る抜け穴:罰則のユルさは相変わらず(4/4 ページ)
“ブラック企業アナリスト”こと新田龍さんに、労働問題を巡るあれこれを聞く短期連載。前編では、2019年4月以降に施行される「働き方改革関連法」の弱点について聞いた。ブラック企業が悪用できる“抜け穴”はあるのだろうか。
“ホワイト化”した企業でも、社員は逆に忙しくなる!?
――このほか、働き方改革関連法の施行に関して懸念している点があれば教えてください。
新田: 法律を順守するつもりなら、これまで社員を遅くまで残業させることで仕事を回していた企業は、別の意味で仕事がきつくなるでしょう。
経営者は、社員の長時間労働を前提としないビジネスモデルを再構築する必要があります。社員は、10時間以上かけていた仕事を8時間程度で終わらせるためのスキルアップやマインドセットの刷新が不可欠です。評価基準も変わり、これまで「遅くまで残業してエライなあ」と褒められていた人が、逆に会社の足を引っ張る“お荷物”になるのです。
従業員が会社にいる時間は確かに減りますが、成果を生むには従来よりも頭を使わねばなりません。“ホワイト化”した企業でも、社員は濃密な時間を過ごすことになるでしょう。
どうすればブラック企業から抜け出せる?
――働き方改革関連法の施行後も「残業が減らない」「何かおかしい」と感じる人が出てくるかもしれません。このような場合は、どうすればブラック企業から抜け出せるのでしょうか。
新田: 昨今は「退職代行サービス」が存在するので、使ってみるのも手でしょう。ただ、民法によって「2週間前の意思表示」をすれば退社できると定められていますし、退職届を内容証明郵便で郵送することも認められています。
すぐに辞めることが難しい場合でも、就業規則に従って「1カ月前の意思表示」を行い、引継ぎを粛々と進めれば、本来は何の問題もないはずです。もし会社側が退職を妨害してきた場合は、「辞める判断をして正解だった」ことが分かります。
ただし、けんか別れになった場合は、退職者の発言などを悪意ある人に切り取られ、足を引っ張られるリスクがあるため、表向きには「円満退社」の形を取るよう心掛けてみてください。
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