なぜ「優秀な若手」は会社を辞めるのか 調査で分かった、なるほどな理由:どうすれば引き止められる?(1/3 ページ)
昨今のビジネス界では、優秀な若手社員が離職するケースが相次いでいるという。それはなぜなのか。どうすれば防げるのか。リクルートマネジメントソリューションズ 組織行動研究所の古野庸一所長に意見を聞いた。
「最近のビジネス界では、優秀な若手社員が相次いで会社を辞めている」――。リクルートマネジメントソリューションズ内の社内研究機関、組織行動研究所の古野庸一所長は12月21日に開いた会見でこう指摘した。
同社は企業の採用支援・人事制度設計・生産性向上などを手掛けている。古野所長は顧客企業と接する中で、誰もが知る大企業の人事担当者などから「若手社員がどんどん流出する」「現職の社員も『辞めたい』と考えている人が多い。何とかしたい」といった相談を受けることが増えたという。
また、日本人材紹介事業協会の調査では、18年4〜9月期にジェイ エイ シー リクルートメント、パーソルキャリア、リクルートキャリアが転職先を紹介した社会人のうち、25歳以下の転職者数は前年比1.2倍の5963人、26〜30歳の転職者数も前年比1.2倍の1万3517人に増えたことも判明。古野氏の主張が裏付けられている。
会社に満足しているのに転職する人も
古野氏によると、こうした若手の転職者には、労働時間・給料・人間関係に不満があった層だけでなく、社内で突出した成果を挙げていたり、一定の給与を得ていたり、人間関係に対する満足度が高かったりと、会社に適応できていた優秀な人材も多いという。そのため、人事担当者は離職防止策の策定に追われているそうだ。
会社になじみ、戦力として活躍していた優秀な人材は、どうして辞めてしまうのか。古野氏らはその要因を突き止めるため、社会人4年目以降に新卒入社した企業を辞めた経験などを持つ25〜32歳の男女515人に調査を行い、退職理由を聞いた。
調査対象者を社会人4年目以降に絞った理由は、不満や採用時のミスマッチによって3年以内に早期離職した人を省くことで、「なぜ会社になじんでいた人が辞めるのか」という点を解明しやすくするため。
優秀な若手はなぜ会社を辞めるのか
古野氏らの調査によると、会社で活躍していた若手の転職理由は「仕事の領域を広げたかった」「これまで以上に専門知識・能力を発揮したかった」「転職の誘いがあった」「生活の変化に応じて働き方を見直したかった」など、前向きなものが多いことが分かった。
回答者からは「4年目になって日常業務に慣れてきた。ある程度の満足感は得られており、次のステップを他業界で踏みたいと思い始めた」「現在の仕事で身に付けた知識を別の世界で生かしてみたいと思った」「海外駐在をしていて、その国にいることが自分のさらなる成長につながらないと思った」など、新たなチャレンジを求めていたとの意見が出た。
「(成果は出していたものの)激務で体を壊し、もっと自分を大切にできる仕事をしようと思った」など、ハイパフォーマーならではの悩みによって転職した人もいた。「子どもが生まれたため、平日休みの会社から土日休みの会社に移った」など、プライベートな理由を挙げた人も存在した。
回答者は、従業員数が多い企業から少ない企業に移ったり、業績の伸びが落ち着いた企業を辞めて成長中の企業に入社したりするケースが多く、転職後の環境に満足している人は91.2%に上った。
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