残っても地獄、辞めても地獄……多くの日本人が悩む働き方の現実:ここが変だよ、日本の「働き方改革」(1/4 ページ)
「会社を辞めるべきか、このまま続けるべきか」。そんな悩みを持つサラリーマンは多いだろう。筆者も相談をよく受けるという。しかしながら、日本の場合は「残っても地獄、辞めても地獄」ということが多々あるので、よほどの強い覚悟が必要なのだ。
「会社を辞めるべきか、辞めるべきではないか」
組織に入ってがむしゃらに働いてきた時期が過ぎ、将来のキャリアパスを考えたり、未来の自分を想像したりし始めたサラリーマンの中にはそう悩む人もいるだろう。筆者自身も起業するために経済産業省を退官しようと決意し、いざ辞めるまでの5年間はずっとそういう気持ちだった。
課長補佐になってさまざまな産業界の人たちと仕事をする機会を与えてもらい、国家プロジェクトの立ち上げやマネジメントを体験させてもらえたが、その先には組織の内部調整のためのポストが待ち構えていた。そこを通り抜けることで課長への道が開けていくのが官僚のキャリアパスだ。実力を認められれば課長の後に審議官、局長へと進むこともできるが、そういったポストに就いたころには定年やセカンドキャリアがちらつき始める。
30代半ばを過ぎ、辞めていく同年代の同僚が増えたほか、テレビのドキュメンタリー番組などを見て、世界や地方で活躍する若者や同年代の人の姿が目に入るようになると、このまま経産省でのキャリアパスを歩んでいくことへの疑問を抱き始めた。今のまま官僚を続けることで自分のやりたいことは実現できるのか、新しいキャリアにチャレンジするには今のタイミングしかないのではないかと悩むようになった。そうやって悶々と悩む日が続き、最終的に2014年7月に経産省を退官した。
退官した最初の1、2カ月は極めて晴れ晴れとした気分だった。これで自分は鬱々とした悩みから解放され、会いたい人にはいつでも会いに行ける、やりたいことはいつでもやれると解放感を味わったものだ。
しかし、そんな解放感が楽しめるのはせいぜい3カ月程度。徐々に退職金を全額投入して設立した会社の資金と自分自身の貯金が急速に目減りしていくことへの不安が募っていく。14年末にはついに貯金が底をついて、無事に正月を迎えられなくなるのではないかとまで思うようになった。
幸いなことに、兼業しているほうの仕事が少し増えたことや、年明けにコンサルティングのお仕事をもらえるようになったことで、いったんは資金繰りの懸念が解消したが、その後も開発費が想定以上にふくらみ、事務所移転で家賃支払いが増えると、役員報酬の支払いを長期にわたって停止しなければならなくなった。このように自分で会社を経営すると資金繰りの懸念と背中合わせの日々が続くことになる。
一度こういう体験をしてみると、毎月同じ日に決まった金額の給与が振り込まれ、年収と所属組織の肩書きがあれば住宅ローンが組め、福利厚生が充実しているサラリーマン生活がどれだけ恵まれていたかをひしひしと感じるようになる。
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