「ひかり」を再評価、ロマンスカーの心地よさ…… 2018年に乗ったイチオシ列車と、2019年期待の鉄道:杉山淳一の「週刊鉄道経済」新春特別編(5/6 ページ)
2018年も全国各地の列車に乗った。観光列車には「つくる手間」をかけることの価値を感じ、新幹線では「ひかり」の良さをあらためて実感、新型の特急列車には期待感を持った。19年も乗りたい列車がめじろ押し。どんな発見があるだろうか。
地方路線…… 便利にするか、楽しくするか
9年ぶりに訪れた福井駅周辺の変貌に驚く。北陸新幹線の福井延伸に向けて、公共交通の整備が行われた。18年6月にえちぜん鉄道の福井駅付近高架化と新駅舎工事が完成。完成前の2月に北陸新幹線用地を借りた仮設区間に乗り、10月に落成区間に乗った。福井鉄道の福井駅前延伸区間と、田原町駅で接続されたえちぜん鉄道と福井鉄道の直通運転区間も乗車した。
平日日中でも利用者が多く、鉄道が地域の役に立っていた。両社とも経営状況は厳しいと聞くけれども、地域が公共交通をしっかり支えている。そういう街は活気があるように思う。
近江鉄道は福井へ向かう途中に立ち寄った。ここには現役を引退した電気機関車が残っているけれども、経営状況が芳しくなく廃車解体の危機とのこと。最近の報道によると、黒字路線はあるものの、その路線の電車たちの車庫、検査場は赤字区間にあるため、黒字路線だけを残すというわけにはいかないらしい。路線の多くはJRと競合しており、利用者や沿線にとって近江鉄道の価値が問われている。(参考記事:廃線と廃車、近江鉄道が抱える2つの危機)
銚子電鉄は旅取材と鉄道演劇「銚電スリーナイン」のために訪問。錦川鉄道も旅取材。どちらも観光客の取り込みが課題となっている。「便利」か「楽しい」か。鉄道の道具としての価値が問われている。
未成線…… 地域おこしの新たなツールとして認識
17年は廃線を観光資源とする地域が「日本ロストライン協議会」を設立。設立総会を取材した。「鉄道は営業の有無を問わず観光資源となる」という考え方に地域おこしのたくましさを感じた。そして18年は、縁あって「未成線サミット」を取材した。未成線とは、建設途中で放棄され、完成に至らなかった路線だ。せっかく作った施設を使わないなんてもったいない。何とか有効利用しようという活動だ。
ただし、運営団体の多くは有志の集まりから始まっており、事業として成立させるまでに大変な努力が必要だ。地域おこし、交流人口の拡大のツールとするために、自治体や地域経済界の支援が必要だと思う。(参考記事:幻の鉄道路線「未成線」に秘められた、観光開発の"伸びしろ")
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