「ひかり」を再評価、ロマンスカーの心地よさ…… 2018年に乗ったイチオシ列車と、2019年期待の鉄道:杉山淳一の「週刊鉄道経済」新春特別編(6/6 ページ)
2018年も全国各地の列車に乗った。観光列車には「つくる手間」をかけることの価値を感じ、新幹線では「ひかり」の良さをあらためて実感、新型の特急列車には期待感を持った。19年も乗りたい列車がめじろ押し。どんな発見があるだろうか。
2019年に乗りたい列車
19年はどんな列車に乗ろうか。まずは岩手県の三陸鉄道。東日本大震災で被災したJR山田線の沿岸区間が復旧し、三陸鉄道に組み込まれる。運行再開は3月23日に決まった。三陸鉄道は南リアス線と北リアス線に分かれていたけれども、この編入で全線が1本の「リアス線」になる。三陸地域では被災前と被災後の女川を訪れ、全線運行再開直後の三陸鉄道に乗車した。あれから5年。どんな変化があるか楽しみだ。旅路の魅力を伝えることで振興の一助としたい。
運行再開と言えば、大井川鐵道の井川線も3月9日に全線運行再開する。末端区間の閑蔵〜井川間が17年5月に土砂崩れのため不通になっていた。SL列車の取材で本線には行く機会が多いけれども、井川線にはごぶさたしていた。
最近登場した新しい観光列車、これから登場する観光列車も楽しみだ。山陰本線の「あめつち」は「サンライズ出雲」と組み合わせたい。羽越本線では「きらきらうえつ」の後継車両として10月から「海里(KAIRI)」が誕生する。「きらきらうえつ」は10月に「夕日ダイヤ」を実施していた。夕日の名所、笹川流れで長時間停車する。「海里(KAIRI)」も継承するか、新たな演出があるか。福岡県の西日本鉄道も本格ピザ釜を備えた観光列車「THE RAIL KITCHEN CHIKUGO」を3月23日から運行開始。すでに予約受付が始まっており、3月は満席。4月も空席わずかだ。
西武鉄道の新型特急列車「Laview(ラビュー)」も3月に運行開始。18年は秩父に3回行き、現行レッドアローにも乗車した。これが乗り納めになるかもしれない。新しい西武特急が楽しみだ。新規開業路線として、3月におおさか東線の延伸、夏に沖縄県のゆいレールの延伸がある。
個人的には、岩手県のJRと近畿圏の私鉄に全て乗ると、日本の鉄道路線全線踏破となる。19年内になんとか達成したいところ。既存の観光列車のうち、まだ乗っていない列車もある。中古車両を使った列車は引退するかもしれない。
そして個人的な課題が1つ。私が取材旅に出掛ける頻度が高い上に、通信販売を多用するため、同居している母の機嫌が悪い。「私はあなたの宅配ボックスではありません」とでも言い出しそうだ。そろそろどこかへ連れて行かねば。
杉山淳一(すぎやま・じゅんいち)
乗り鉄。書き鉄。1967年東京都生まれ。年齢=鉄道趣味歴。信州大学経済学部卒。信州大学大学院工学系研究科博士前期課程修了。出版社アスキーにてPC雑誌・ゲーム雑誌の広告営業を担当。1996年よりフリーライター。IT・ゲーム系ライターを経て、現在は鉄道分野で活動。鉄旅オブザイヤー選考委員。著書に『(ゲームソフト)A列車で行こうシリーズ公式ガイドブック(KADOKAWA)』『ぼくは乗り鉄、おでかけ日和。(幻冬舎)』『列車ダイヤから鉄道を楽しむ方法(河出書房新社)』など。公式サイト「OFFICE THREE TREES」ブログ:「すぎやまの日々」「汽車旅のしおり」。
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