「いきなり!ステーキ」は相次ぐ競合の参入を振り切れるか?:“いま”が分かるビジネス塾(3/3 ページ)
これまで破竹の勢いで成長してきた「いきなり!ステーキ」。ここへ来て競合となる店舗が次々と登場している。今後の展開はどうなるのだろうか?
優位性はすぐに崩れないが、成長ペースは鈍化する
ペッパーフードサービスが出願した特許については、16年に第三者が特許庁に異議申し立てを行い、特許庁はいったん、特許を取り消す決定を行っている。同社は知的財産高等裁判所に特許取消決定の取り消し請求を行い、裁判所は18年10月、同社の主張を認める判決を下した。これによって同社のビジネスモデル特許は正式に認められることになった。
同社が特許を持っていることは、競合の抑制にはある程度、効果があると考えられるが、これによって競合店の進出を完全に防ぐことは不可能である。先ほど説明したようにアイデアそのものは特許対象にならないので、似たようなオペレーションを実現することはそれほど難しくないからである。
結局のところ、サービス内容と店舗の立地でシェアが決まることになるが、圧倒的な知名度を持つ同社の優位性がすぐに崩れることはないだろう。
しかしながら、どんな業態であっても、コアな顧客層を超えて店舗を拡大すると、成長スピードが鈍化するという現象が見られる。この法則に、いきなり!ステーキだけが抗うのは難しいだろう。市場はそうした状況を敏感に感じ取っており、運営会社であるペッパーフードサービスの株価は、同社の怒濤(どとう)の出店攻勢が始まった17年後半をピークに下落が続いている。
同社にはまだ拡大の余地があると考えられるが、成長業態としてのピークは過ぎた可能性が高い。今後は、どの程度の水準で軟着陸させるのかという点に市場の関心が集中するだろう。
加谷珪一(かや けいいち/経済評論家)
仙台市生まれ。東北大学工学部原子核工学科卒業後、日経BP社に記者として入社。
野村證券グループの投資ファンド運用会社に転じ、企業評価や投資業務を担当。独立後は、中央省庁や政府系金融機関など対するコンサルティング業務に従事。現在は、経済、金融、ビジネス、ITなど多方面の分野で執筆活動を行っている。
著書に「AI時代に生き残る企業、淘汰される企業」(宝島社)、「お金持ちはなぜ「教養」を必死に学ぶのか」(朝日新聞出版)、「お金持ちの教科書」(CCCメディアハウス)、「億万長者の情報整理術」(朝日新聞出版)などがある。
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