なぜLGBT後進国ではダメなのか 「国つぶれる」発言を覆す“伝説のスピーチ”:河合薫の「社会を蝕む“ジジイの壁”」(1/5 ページ)
「同性婚が認められないのは違憲」として、10組の同性カップルが集団訴訟を起こす。先日、平沢勝栄議員が「国がつぶれる」と発言したことからも分かるように、日本は「LGBT後進国」。“自分と違う人”を尊重できる社会になるのか。そのヒントとなる「伝説のスピーチ」とは……
「同性婚が認められないのは憲法で保障された婚姻の自由を侵害し、法の下の平等に違反する」として、東京や名古屋などの10組の同性カップルが、東京地裁など全国で国家賠償を求める集団訴訟を起こすことが分かりました。
同性婚の合憲性を正面から問う訴訟は初めてで、法整備を怠った国の不作為などを問う方針です。
くしくも自民党の平沢勝栄議員が、山梨県で開かれた集会であいさつし、「少子化問題」に触れた際にこう述べました。
「LGBTで同性婚で男と男、女と女の結婚。これは批判したら変なことになるからいいんですよ。もちろんいいんですよ。でもこの人(LGBT)たちばっかりになったら国はつぶれちゃうんですよ」
また、東京の渋谷区や世田谷区が同性婚について証明書を出していることに触れ、「先進区だとか自慢しているが、私にはその考え方はよく分からない」という発言もあったとされています。
平沢氏はメディアの取材に対し、発言を認めた上で「私はLGBTを認めている。差別する意図はなかった」と反論していましたが、「だったらわざわざ言わなきゃいいのに……」というのが率直な感想です。
そもそも少子化問題でLGBTに触れる必要性が私には全く理解できません。なぜ、子どもを持った夫婦が2人目を産まないのか? そのことを考えることこそが、政治家のお役目ではないでしょうか。
いずれにせよ、企業や学校などでは、まだまだ十分とは言えないまでも、少しずつ、本当に少しずつ、LGBTへの理解が進んでいるだけに今回の発言が残念でなりません。
実際、冒頭の集団訴訟の原告には、「会社側の変化」に背中を押されて立ち上がったカップルがいるのです。
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