ファミマのうまいパン決定戦 山パンの全国制覇を阻んだ神戸屋の策略:パンの形状に秘密あり(2/3 ページ)
ファミマの「うまいパン決定戦」優勝メーカーが決まった。全国制覇を狙っていた山崎製パンだったが、神戸屋に阻止された。その背景にあった神戸屋の策略とは?
優勝した山パンと神戸屋のパンとは?
それでは、優勝した山崎製パンと神戸屋はそれぞれどんな商品を発売したのだろうか。
山崎製パンが発売したのは「白いメロンパン(赤肉メロン入りクリーム&ホイップ)」(138円、税込、以下同)だ。これは、白いビスケット生地を被せたメロンパンに赤肉メロン入りクリームと、メロンホイップの2種類のクリームをサンドしたものだ。
一方の神戸屋は「まるでリンゴ」(128円)を発売した。これは、さわやかな酸味の効いた紅玉りんごとシャキシャキした食感のふじりんごの2種類を使用したもので、りんごの下には洋酒入りカスタードクリームを組み合わせてある。
同商品は、本物のりんごのような外見を再現することにこだわっている。同社マーケティング本部MD部の斎藤健二部長は「お客さまがパッと見たときに、りんごだと分かるようにしました。へたの部分まで再現するのは、(製造ラインの面で)大変でした」と振り返る。
また、斎藤部長はうまいパン決定戦で勝ち抜くために、パンの形状に別の工夫も施したという。それは、パンの厚みを意図的に抑えることで、商品棚により多く並べられるようにしたことだ。小売業界には「ボリューム陳列」という考え方がある。これは、たくさん商品を並べることでお客に「この商品は売れているんだな」と思わせ、購入につなげる手法だ。もし、パンの形状が立体的だったり、一定以上の厚みがあったりすると、棚に並べられる数が制限されてしまう。
もちろん、どの商品をどの程度仕入れるかの判断は各店舗が行うため、商品力がなければ棚に多く並べてはもらえないが、あえて生地を厚くしなかった戦略も優勝の背景にあると斎藤部長は考えているのだ。
今回のうまいパン決定戦に参加したメーカーのメリットはどこにあるのだろうか。神戸屋の斎藤部長は「優勝した“ご褒美”として、弊社の他の商品も優勝商品と一緒に店舗に並べてもらえます」と解説する。プライベートブランドのパンが増えるなかで、各パンメーカーは自社ブランドを消費者により認知してもらう必要に迫られている。山崎製パンと神戸屋はうまいパン決定戦で優勝することで、知名度アップのチャンスを得たようだ。
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