本の販売は苦戦しているのに、入場料1500円の書店が好調なワケ:水曜インタビュー劇場(入場制限公演)(2/6 ページ)
東京六本木に、ちょっとユニークな書店が登場した。入場料1500円を支払わなければ、本を見ることも、購入することもできないのだ。店名は「文喫」。店内はどのような様子なのかというと……。
コンセプトは「本と出会うための本屋」
土肥: 平日の13時に取材しているわけですが、店内にはたくさんの人がいますね。閲覧スペースには机が一列に並んでいて、すべて埋まっている。本を読んでいたり、PCで作業をしていたり、スマホをいじっていたり。喫茶スペースでも半分ほどが埋まっている。雑誌を読んでいたり、コーヒーを飲んでいたり、プリンを食べていたり。
2018年6月に閉店した青山ブックセンター六本木の跡地にできたわけですが、いつごろから入場料1500円の書店をオープンしようと考えたのでしょうか?
武田: この場所があったからプロジェクトがスタートしたのではなくて、何か新しい形の書店をつくることはできないかと模索していました。本を選ぶ楽しさを提供することはできないか、偶然に出会うことはできないか。といったことを考えているうちに、「本と出会うための本屋」がいいのではと考え、それをコンセプトにしました。
次に、書店を会員制にするのはどうか、サブスクリプション型はどうかといった意見がありました。そんな中で、入場料はどうかといった声がありまして、それでいこうと決まりました。
土肥: 「本と出会うための本屋」というコンセプトは素敵だなあと思います。ただ、書店に入るのにお金がいるって、社内から反対の声はなかったですか?
武田: 「本当に大丈夫なのか?」といった声がありました。誰もやったことがない試みなので、大丈夫なのかどうかも分かりませんよね(笑)。ただ、誰もやったことがないことなので、ずーっと不安を感じていました。入場料を請求することで、お客さんは来ないのではないか、本が売れないのではないかと。
書店って、ハードルが低いですよね。どんな本があるのかなと気になれば、フラリと立ち寄ることができる。そこがとてもいいところなのに、入場料を請求すればその良さを壊すことになる。
土肥: 不安を感じていたのに、最終的に「やろう!」と決断したのはなぜ?
武田: 「入場料」というインパクトのある言葉が大きかった。なんともいえない違和感を覚えながらも、なぜか心地よい。そうなると、「やらない理由はない」という気持ちになったんですよね。ご存じの通り、書店の環境は厳しい。同じようなことをやっていても厳しい状況は目に見えているので、反対の声があっても、「入場料」を必要とする書店を開こうと決意しました。
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