本の販売は苦戦しているのに、入場料1500円の書店が好調なワケ:水曜インタビュー劇場(入場制限公演)(3/6 ページ)
東京六本木に、ちょっとユニークな書店が登場した。入場料1500円を支払わなければ、本を見ることも、購入することもできないのだ。店名は「文喫」。店内はどのような様子なのかというと……。
購買率と客単価が高い
土肥: 入場料を支払えば、棚に並んでいる本を読むことができる。また、机の上にPCを広げて仕事をすることもできる。漫画喫茶やコワーキングスペースのようにも感じるのですが、そのへんも意識したのでしょうか?
武田: いえ、あくまで書店の形にこだわりました。一般的な書店で提供しているサービスは、すべて備えています。定期購読もできますし、取り寄せもできる。漫画喫茶でコーヒーを飲む場合、自販機のケースが多いですよね。一方、文喫の場合、スタッフが豆を挽いて、コーヒーをいれる。また、図書館と違って、本の貸し出しは行っていません。
土肥: 書店という形にこだわったわけですが、本はどのくらい売れているのでしょうか?
武田: 金額をお伝えすることはできないのですが、入場者の30〜40%は購入しています。一般的な書店の数字はよく分かりませんが、もっと低いのではないでしょうか。
土肥: フラリと店内に入って、立ち読みをして店を後にする人が多いですからね。
武田: また、客単価も高い。一般的な書店の場合、客単価は1300〜1400円ほどですが、文喫では3000円(入場料除く)ほど。高価な本を買ったり、まとめ買いするケースが多いですね。
お客さんの行動を観察していると、目的買いをしている人は少ないかなあと。人気作家の新刊が出たので、それを買うためにここに来たというよりも、文喫に足を運べば、何か面白そうな本と出会えるかもしれない。そんな偶然を求めて、来店している人が多いのかなあと。
土肥: そうなると、やはりどの本を棚に並べるのかがキモになりそうな。
武田: ですね。1日に新刊は200点ほど出ているので、売るものには困りません。店内には約3万冊の本が並んでいますが、1タイトル1冊のみ。何を仕入れてどうやって見せていけばいいのか、といったことにチカラを入れていかなければいけません。
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