外資系証券で6000万円使って分かった接待の極意:「お金」と「仕事」の本当の話をしよう(4/4 ページ)
顧客と信頼関係を築く手段としてに欠かせない接待。筆者は外資系証券会社に在籍していた際に通算580回の接待をした。合計6000万円近くを使って見えてきた接待の極意とは?
便器の上で迎える高級接待のクライマックス
接待はついにフィナーレを迎える。「トイレに行く」のである。酔って忘れないように、細かい数字も含めた一切の情報を、1軒目で会計した際に渡されたクレジットカード伝票の裏に必死で書き留めるのだ。それも、顧客とトイレで鉢合わせしないように、個室にかぎをかけて行う。顧客も結局はプロだから、情報共有した以上、アクションを期待する。私はその期待に応える必要がある。
接待が終わり、帰宅したら午前4時を過ぎている。いま床についたら、確実に会社で行われる午前7時の朝会に寝坊する。私はシャワーを浴び、新しいシャツとスーツに着替えて、タクシーに飛び乗って会社へ向かう。デスクに座ると、くしゃくしゃになったクレジットカード伝票をひっぱりだし、汚い殴り書きのメモをみながら、会社全体にメールで報告をする。結果、大きなビジネスにつながった。トレーディングフロアの上司や先輩全員が、「よくやった」と祝福してくれる。顧客にも並々ならぬ価値を提供し、お褒めの言葉をいただけた。
接待の目的は、高級な食事をして楽しい時間を過ごすことではなく、信頼関係を構築して次の取引への橋渡しを行うことだ。プロ同士であれば、その場で仕事の話もするのが暗黙のお作法であり、腕の見せ所なのである。そこまでいって、2人で30万円の接待費が、会社としても「妥当。むしろ安い」となる。私はこの「夜の作法と規律」を、現在のミッション・キャピタルでの活動においても受け継いでいる。
接待の極意
- 相手の好みは普段のやりとりで把握する
- 相手にリラックスしてもらうために自分からリラックスさせる話題を切り出す
- 会話では相手がリアクションする間を残す
- 目の前で会計はしない
- ただの食事と世間話で終わらせない
- 重要な情報を相手の目の前でメモしない
- 期待されたことを迅速に実行する
- 相手の時間と会社経費へのリスペクトを、結果で表す
著者プロフィール
金武偉(キム・ムイ)
個人投資家の視点で上場企業ガバナンスについて発信中。投資家。ゴールドマン・サックス証券出身。元ニューヨーク州弁護士。マンティス・アクティビスト投資1号(株)代表。ミッション・キャピタル代表。
Twitter:@BestGovernance(ハンドルネーム:投資家ウィル)
blog:個人株主ガバナンスを考えるブログ
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