AIに職を奪われないための「メタ能力=能力をひらく能力」:人間のAI化が問題(1/4 ページ)
AIが人間の職を奪うかどうかの議論において真の問題は、AIの高度化ではなく、むしろ人間のAI化です。つまり、人間がAIと同じ土俵に下りてしまっていて、物事の処理能力で競走をすることです。それを防ぐのは能力の高次化ではないでしょうか。
著者プロフィール:村山昇(むらやま・のぼる)
キャリア・ポートレート コンサルティング代表。企業・団体の従業員・職員を対象に「プロフェッショナルシップ研修」(一個のプロとしての意識基盤をつくる教育プログラム)を行なう。「キャリアの自画像(ポートレート)」を描くマネジメントツールや「レゴブロック」を用いたゲーム研修、就労観の傾向性診断「キャリアMQ」をコア商品とする。プロ論・キャリア論を教えるのではなく、「働くこと・仕事の本質」を理解させ、腹底にジーンと効くプログラムを志向している。
「AI(人工知能)の進化によって、自分の仕事がなくなるのではないか」という議論が最近よくわき起こります。著書『ウォールデン 森の生活』で知られる19世紀の思想家、ヘンリー・デイヴィッド・ソローは次のように書いています。
「私たちはもはや、みずからつくった道具の道具になってしまった」。
AIが人間の職を奪うかどうかの議論において真の問題は、AIの高度化ではなく、むしろ人間のAI化だといえるのではないでしょうか。つまり、AI自体は道具であり、それを人間が賢く使いこなすことができれば危惧や不安は起こりません。ですが実際は、人間のほうがAIと同じ土俵に下りてしまっていて、やれ計算能力はどっちが上だとか下だとか、やれ記憶能力はどっちが優れているか劣っているかの競走意識になっているわけです。
閉じたルール・閉じたシステムの中での合理的処理作業なら、もはや人間は機械に勝てません。しかし、幸運なるかな、深遠なるかな、この世の中はオープンなシステムです。そこには、正解のない問いがたくさんあり、ときにルールの外に答えをつくり出す醍醐味があり、非合理的な決断がむしろ幸福を生むことだってあります。そこにおいて、人間がAIの確固たる主人になれるなら、手段であるAIの進化はまったく歓迎すべきことです。逆に、ソローが今から160年も前に言及したとおり、人間が道具の道具になり下がってしまうと問題は深刻になります。
能力の高次化という観点から、人間が持つかけがえのない能力とは何か、事業・仕事・キャリアにおける自分の存在意義は何かについて考えたいと思います。
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