幸楽苑がAIを本格活用へ 何をどう役立てるのか:キャッシュレスも推進(1/2 ページ)
異物混入事件で業績が低迷していた幸楽苑HDが、矢継ぎ早に改革を打ち出し、客足が戻りつつある。1月28日の記者会見で新たにAIを活用すると発表したが、どのような戦略なのだろうか。
幸楽苑ホールディングス(HD)は1月28日に都内で会見を開き、楽天との連携強化を通して、AI(人工知能)を活用したメニュー開発や顧客分析を本格的に推進すると発表した。また、現状ではほとんどの店舗で現金決済のみの対応となっているが、キャッシュレス化も推進するとした。
AIを使ってお客の来店動機を高める
記者会見には楽天の三木谷浩史会長も登壇し、「楽天ポイントカード」を1月29日から「幸楽苑」全517店舗(2019年1月28日時点)で利用可能にすると発表した。楽天ポイントカードを導入することで、楽天との関係を強化し、さまざまなサービス開発を共同で行っていくという。
では、具体的に幸楽苑HDはどのようにAIを活用していくのだろうか。まず、都内店舗に、楽天の研究機関「楽天技術研究所」が開発したAI搭載のデジタルサイネージ「幸楽苑 UmaAI(うまあい)くじ」を試験的に導入する。導入時期は19年度中を目指すという。
このくじはAIを活用した画像認識技術により、お客の顔から年齢や性別などを推定し、おすすめのメニューを提示するもの。推奨されたメニューを背景に写真撮影もできる。将来的には幸楽苑の店舗で利用できるクーポンくじの発券も予定しているという。この取り組みを通して、来店時にお客に「楽しい」と感じてもらうのが狙いだ。
メニュー開発にもAIを活用するという。新井田社長は「お客さまの感じる『おいしさ』と当社の考える『おいしさ』は異なる可能性がある。AIによって、お客さまの声を拾い上げていきたい」と語った。
幸楽苑HDは楽天ポイントカードの導入を通して、顧客分析も強化する。新井田社長によると、現状ではどのくらいの数のお客がどの商品を注文したのかという「注文率」しか把握していないという。お客が決済時に楽天ポイントカードを提示すれば、年齢や性別が分かるようになるため、メニュー開発の手法に大きな影響を与える可能性がある。楽天の三木谷会長も「データを活用したメニュー開発ができる」と自信を見せた。
キャッシュレス化も推進
幸楽苑HDの新井田社長は、今後、キャッシュレス化を推進する可能性についても言及した。ショッピングセンター内のフードコートには、電子マネーやクレジットカードを使える店舗が一部あるが、基本的に幸楽苑の店舗は現金のみの決済となっている。現在、お客の利便性を向上させるために、宮城県の店舗ではクレジットカードの導入実験を進めている。新井田社長は「来客と集客への影響を調べながら、段階的に(キャッシュレス化を)進めていく」とした。
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