AIに職を奪われないための「メタ能力=能力をひらく能力」:人間のAI化が問題(4/4 ページ)
AIが人間の職を奪うかどうかの議論において真の問題は、AIの高度化ではなく、むしろ人間のAI化です。つまり、人間がAIと同じ土俵に下りてしまっていて、物事の処理能力で競走をすることです。それを防ぐのは能力の高次化ではないでしょうか。
「能力をひらく能力」によって仕事・キャリアがその人独自のものになる
以上、I次元能力からIII次元能力について簡潔にまとめます。
【I次元能力】
- 能力をもろもろ保持し、単体的に発揮する
- 単に「〜できる」「〜を知っている」ことに満足する
- その単体的な能力を磨くことが自己目的化する
【II次元能力】メタ能力II
- 能力を“場”にひらく能力
=場が求める目的に合わせて諸能力を自在に編成し、成果を出す力。そして、その場に応じたI次元能力を新たに身につけていく
- 能力を使って成果を上げることにおもしろさを感じる
【III次元能力】メタ能力III
- 能力と場を“意味”にひらく能力
=意味のもとに諸能力を自在に編成し場をみずからつくり出し/つくり変え実現したい価値を体現する力。そして、その意味の中核にある価値観を強めていく
- 能力と場を使って意味を満たすことに喜びを感じる
このように、I次元の能力保持でとどまり、AIと競走になる人は「AIに仕事を奪われる」ことが現実味を帯びてくるでしょう。
しかし、場(環境や社会)の要求を感じ取り、どんな能力を組み合わせて、どんな成果を出せばよいかを考え動ける人は、永久にAIなど機械に置き換わることはありません。II次元での場の目標設定や目的認知は、オープンクエスチョン(開いた問い)であり、そこには飛躍と創造・価値観が不可欠であり、決して機械頭脳が上ってこられない次元だからです。ましてやIII次元の理念・信条・善意識・美意識などに基づいた意味の創出と体現は、人間にしかできない営みです。
テクノロジーがどんどん進化する時代にあっては、「能力をひらく能力」の次元にまで自分を押し上げていくことではじめて、自分らしい、あるいは、自分が求められる仕事を獲得することができます。さらには人生100年時代を迎えた今、何十年と続く長きキャリアの道を深い動機をもってはつらつと歩んでいくためには、意味を創出して、そのもとに自己の能力と環境を最大限生かしきる力をもつことです。(村山 昇)
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