AIに職を奪われないための「メタ能力=能力をひらく能力」:人間のAI化が問題(3/4 ページ)
AIが人間の職を奪うかどうかの議論において真の問題は、AIの高度化ではなく、むしろ人間のAI化です。つまり、人間がAIと同じ土俵に下りてしまっていて、物事の処理能力で競走をすることです。それを防ぐのは能力の高次化ではないでしょうか。
【III次元能力】能力と場を“意味”にひらく能力
能力の高次元へのシフトはこれで終わりではありません。もう一段高い移行がIII次元能力です。これは自分が持つ諸能力とそれが発揮される場を、意味のもとにひらいていく能力です。
例えばここで、大学でロシア文学を専攻したAさんを例にとってみましょう。Aさんにはもちろんロシア語で読み書きできる能力があります。これはI次元能力としての素養です。
そんなAさんは総合商社に就職し、ロシアに自動車を輸出する部署に配属になりました。そうした場を与えられたAさんにとって必要になるのは、ロシア語だけでなく、貿易知識、交渉術、人脈構築力、異文化理解などさまざまな業務遂行能力です。これらを身につけ、組み合わせて自動車販売の成果を出していく。そして事業・組織に貢献していく。これがII次元への能力高次化です。こうすることで単にロシア語が話せるAさんは、仕事のできる商社マンになっていくのです。
そしてAさんは自動車輸出部門での活躍が買われ、その後ロシア駐在となり、エネルギー開発部門に異動となりました。そこでもAさんは語学力をもとに、その他の能力を組み合わせて着実に成果を出していった。これは「場X」から「場Y」へと移っても、同じように成果を出すべく能力をひらいていけたことを示しています。II次元の中での成熟化といってもいいでしょう。
さてさらに、ロシアでの仕事が長く続いたAさんはやがて支社長となり、次第に日本とロシアの文化交流に貢献したいと思うようになりました。彼はビジネスで築いた人脈と立場を活用し、いろいろなイベントを企画・推進することに汗を流すようになります。「民間外交・文化交流こそ平和を築く礎」という信念のもと、これまでのキャリア・人生で培った能力を惜しみなくそこに発揮しました。そしてその活動は定年後も続くこととなり、Aさんのライフワークになっていきました。
これこそ能力と場を意味にひらいている状態であり、II次元からIII次元への能力高次化の姿といえます。能力をIII次元でひらいている人間にとっては、もはや諸能力と場は手段でしかありません。III次元で輝いている意味こそ、その人の中心の目的となり、満たしたい価値になっています。
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