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動画アプリ「TikTok」のヒットが意味すること日本のベンチャー育成どうする?(2/2 ページ)

中国のユニコーン企業、ByteDanceが手掛けたショート動画配信アプリ「TikTok」が日本の若者の間でヒットしている。そこから見えてくるものとは……?

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ニッセイ基礎研究所
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 こうした世界の潮流を踏まえて、日本の成長戦略やベンチャー支援策は策定された。日本のとるべき方策については、政府の有識者会議「第四次産業革命に向けたリスクマネー供給に関する研究会」でも議論されてきた。

 その「取りまとめ」では、明日のリーディング産業を作るためのリスクマネーが日本に足りない中、産業革新投資機構(JIC)が「日本を代表する投資機関としてグローバルに認知されるものに成長し、日本におけるリスクマネー供給機能の強化に向け、中心的な役割を担うことが期待される」と言及されている。この取りまとめこそ、先日辞任を表明したJICの田中正明社長が「バイブル」と呼んでいたものだ。そのJICは、ベンチャー支援策の一つの柱であったが、取締役9人の辞任を受け、出直しを図ることとなった。

 起業家が少ない、リスクマネーが少ないと言われてきた日本だが、ベンチャー・エコシステム(生態系)が育ちつつある。大企業がオープンイノベーションを求めてベンチャーとの連携を増やしている。リスクマネーも米中と圧倒的な差はあるが増えており、日本にも画期的なベンチャーが生まれてきている。ベンチャーが次々と生まれるエコシステムが「テイクオフ」するまで、あと一押し必要だ。世界的なイノベーション競争の中、あと数年で「決着」がつく可能性もある。残された時間が多いわけではない。産官学を挙げた取組みが必要だ。

 TikTokのヒット、そしてJICの問題が注目を集めたことを機に、日本のベンチャー・エコシステムをどう育てていくのか、政府のベンチャー支援策や官民ファンドはどうあるべきか等について、前向きな議論が進むことを期待したい。

著者プロフィール

中村洋介(なかむら ようすけ)

ニッセイ基礎研究所 総合政策研究部 主任研究員・経済研究部兼任

研究・専門分野:日本経済、ベンチャー


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