もしも銭形警部が人工知能を使いこなしたら、警察はルパンを逮捕できるのか?:近未来の働き方を想像する(1/7 ページ)
日本では「熱血型上司」が人気だという。しかし、近い将来それと対極にある存在が私たちの上司になるかもしれない。人工知能だ。そのとき、部下の動きはどのように変わっているのだろうか。「ルパン三世」の銭形警部を例に見ていこう。
理想の上司は今いずこ
理想の上司など存在しない。もしも”マシ”な上司が存在するとしたら、それは足を引っ張らない上司のことである――。
サラリーマンを経験していると、時にそんなニヒルな言葉を発したくなるほど組織の論理に振り回されることがある。よく語られるように、人が本質的に悩むことは、良くも悪くも”人”に関することなのは筆者も実感するところであるし、特に上司―部下の関係というものは、お互いの評価がお互いの利益に直結するため、何とも独特で繊細な関係であると言えよう。
明治安田生命保険相互会社が2018年春の新入社員に実施したアンケートによれば、理想の上司は、1位:内村光良さん、2 位:松岡修造さん、3 位:タモリさんだったそうだ。親しみやすさや頼もしさ、知的さが支持された内村さんやタモリさんに対して、「熱血さ」が支持された松岡さんはランキング全体を見ても特徴的と言えそうである。
実際、わが国の企業では知的さよりも熱血さをウリにした上司が少なくない。自らの経験と直感に基づき指示を出し、時に理由や妥当性を説明できず部下から指示を懐疑的に思われるものの、言う通りにやってみたら案外うまくいくことも多い――そんな経験をした読者も多いのではないだろうか。
この手の上司は、部下とうまく相性がマッチングしたり、人間性が優れていたりすれば慕われることも多い一方で、蛇蝎(だかつ)のごとく嫌われる場合もある。しかし、理想の上司に松岡修造さんが入るあたり、日本ではこの熱血さは一定程度評価されていると言えそうだ。
しかし近い将来、こうした「熱血型上司」と対極にある存在が私たちの上司になるかもしれない。近年急速な進歩をみせる人工知能技術により、上司の役割(マネジメント)は人工知能が担うことが真剣に議論されているからだ。
自分の上司が松岡さんから人工知能に変わったことを想像してみてほしい。その時、私たち部下の動きはどのように変わっているのだろうか。
人を人工知能がマネジメントするというと、SF小説に書かれるディストピア的で何とも恐ろしいもののように聞こえる。その一方で、社内飲み会でのコビ売り合戦やえこひいきからも開放されるかもしれない。
期待と不安の両方を感じる近未来の世界において、私たちの働き方はどのように変わっていくのだろうか? 「熱血型」の上司が、直観に頼るのを止め、人工知能を使い出したら、部下の生活にはどのような影響があるのか? 本記事ではその部分に言及していきたい。
より分かりやすいイメージをつかんでもらうため、現実世界に存在する上司を例に取ることも考えたが、各方面に配慮して、ここでは架空の世界から「熱血型」のリーダーに登場願いたいと思う。
国民的アニメ「ルパン三世」の銭形警部を例に、もしも銭形警部が自らの直感力に頼るのではなく人工知能を使い出した場合、部下たる埼玉県警の刑事の働き方はどのように変わるのかについて考えたい。
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