もしも銭形警部が人工知能を使いこなしたら、警察はルパンを逮捕できるのか?:近未来の働き方を想像する(2/7 ページ)
日本では「熱血型上司」が人気だという。しかし、近い将来それと対極にある存在が私たちの上司になるかもしれない。人工知能だ。そのとき、部下の動きはどのように変わっているのだろうか。「ルパン三世」の銭形警部を例に見ていこう。
銭形警部とはどんな上司か?
銭形警部といえば、ルパン三世を追うライバルである。最終的にはいつもルパンを取り逃がしているイメージがあるが、そもそも他の捜査官ではルパンと面と向かって相対することさえ困難であり、ルパン専任捜査官として国際刑事警察機構(ICPO)でも評価を得ている敏腕捜査官だ。
所属はICPOであるものの、なぜか埼玉県警のパトカーを率いており、「ルパンならそうするからだ!」と、己の経験と直観に基づいた判断で成果を上げる仕事人である。漫画やアニメ内で確認する限り、科学的物証や論拠に基づいた捜査を行っている描写は少ない。
基本的に、銭形は自らの直感力を武器とした捜査を行うリーダーであり、その直感力が他の追随を許さないほど優れている、まさに人間の「脳力」勝負をする上司である。
銭形に評価されるのはどんな部下?
銭形のような「直感力を武器としたリーダー」の下につく部下の生活はどうであろうか。彼らは昼夜休日問わず、世界のさまざまな場所に呼び出されては深夜にカップラーメンをすすり、常識的に考えて死や重症の危険がある局面でも黙ってパトカーのハンドルを握ることを強要されている。
銭形の直感力が誰にも真似できないほど優れているため、たとえ根拠不明で理不尽な指示であったとしても、ルパン逮捕という結果のためには「銭形の指示は絶対」である。実際、銭形の「ルパンならそう考えるでしょう」という説明に納得できず、「こんなところにルパンが来るのか?」「うちの金庫のセキュリティは絶対だ!」などとして銭形の指示をないがしろにした金持ちは、大抵その隙をルパンに突かれることになる。
熱血直観型の上司は、自らの優れた直観の結果を伝えることはできても、「なぜそのように考えたのか」をうまく説明できない場合が多い。従って、銭形と埼玉県警の刑事のように「あの人がそう言うならそうなのだろう」と考えられる信頼関係があることが、結果を残す上で必要だ。
上述の銭形と金持ちのように信頼関係がないケースでは、チームとして結果を残すことはできない。従って、評価される部下の基本的な能力とは、(1)自らの直観の根拠をうまく説明できない上司の意向を噛み砕いて理解し、空気を読む力、(2)指示を一言一句聞き漏らさず、正確迅速に実行する力、(3)理不尽な指示や叱責(しっせき)も気にしないタフなマインド 、ということになる。優秀な部下として認めてもらいたいならば、上記3つの能力を磨き上げていくことが基本的な戦略になる。特に1つ目の空気を読む力は、2つ目、3つ目の力を発揮するためにも根幹となる力である。
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