もしも銭形警部が人工知能を使いこなしたら、警察はルパンを逮捕できるのか?:近未来の働き方を想像する(3/7 ページ)
日本では「熱血型上司」が人気だという。しかし、近い将来それと対極にある存在が私たちの上司になるかもしれない。人工知能だ。そのとき、部下の動きはどのように変わっているのだろうか。「ルパン三世」の銭形警部を例に見ていこう。
銭形のチームで部下を続けたら、どんなキャリアを歩むことになるか?
銭形を信頼し、空気を読んでタフに動いてくれる部下がいるならば、これはこれで組織としては問題ないようにも思えるが、部下側にリスクはあるだろうか?
信頼できる熱血型の上司とともに仕事場を駆け抜けることは、まるで部活や青春時代のように楽しく、一見、部下側にも問題はないようにも思える。しかしながら、筆者が考えるところ、組織としては(銭形の替えがきかないという課題は残るにせよ)直近の大きな課題 はないが、部下たる刑事にとっては、キャリアプラン上のリスクが3つあると考える。
つぶしが効かない
上記の能力の根幹にある「空気を読む力」は対銭形限定のスキルである。部署異動があり、上司が替われば、とたんに役に立たなくなる可能性が高い。
マネジメントスキルが身に付きづらい
上述した3つの能力は、いわば「指示を実行する」力だ。人に指示をする経験が積みづらく、自身が上司の立場になった時に苦労する。
受け身人間になりがち
どうしても行動が「銭形の指示待ち」になり、自発的な動きに結び付きづらい。実際、埼玉県警の中に銭形の片腕的な人物がいる描写はなく、ほとんど顔のないモブキャラである。あまりに直感的な上司と時間を過ごすことは、長期的に見るとキャリアの選択肢を狭める結果にもなりかねない。
まして、銭形のチームは危険な追跡や夜勤警護など日常茶飯事であり、体力的にもいつまでも続けられるものではない。結果的に、こうした人間は年齢とともに裏方へ異動していき、バックオフィスや鑑識業務に移っていくというキャリアプランになるだろう。「第二の銭形」として、自身のチームを持って独自にルパンを追跡する「上司」に育つキャリアは選択しにくくなる。
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