もしも銭形警部が人工知能を使いこなしたら、警察はルパンを逮捕できるのか?:近未来の働き方を想像する(5/7 ページ)
日本では「熱血型上司」が人気だという。しかし、近い将来それと対極にある存在が私たちの上司になるかもしれない。人工知能だ。そのとき、部下の動きはどのように変わっているのだろうか。「ルパン三世」の銭形警部を例に見ていこう。
決定木分析による直感力の技術伝承
もう一つの課題は、「そもそもルパンの行動や変装を見破れるのが銭形だけ」という状況だ。
彼が何に違和感をもって変装を見破っているのか、その技術伝承を行うとともに、未熟な埼玉県警刑事を補助する「ルパン変装予測ツール」が必要だ。どういう捜査配置でどういう状況に陥ったとき、お宝の隣で警備している刑事の前に現れた銭形がルパンであるという確率は○%と即座に計算してくれる人工知能がほしい。
また、過去に起きた事象の原因を分解・整理する「決定木分析」という手法も捜査に役立ちそうだ。人工知能を使ってこれを行い、過去の捜査経緯を分析しておけば、埼玉県警の刑事も「ルパンはこういう変装をしてくるから、こういう視点で疑えばいいのか」ということが分かるし、複雑な原因の組み合わせを瞬時に人工知能が計算してくれれば実捜査にも役立つ。
上記のような人工知能が導入されたとき、銭形の部下たちは、これまでの行動様式を維持して高い評価を得ることができるだろうか。結論から言うと、難しいだろう。
例えば、銭形の指示がなくとも顔画像解析によって何者かが紛れ込んでいること分かる。そんな状況で「おかしい」と思いつつ、ただ指示待ちをしていたのでは、ただのグズになってしまう。また、技術伝承できるツールは渡されているわけで、そこで自ら学ぶことなく指示待ちをしてルパンにだまされていては、大目玉を食らうこと請け合いである。
これまで優秀な部下として評価されるために必須だった3要素は、(完全に不要になるとは言わないが)相対的に重要度は下がってくる。「銭形の指示を忠実に実行する」という行動様式もまた、評価されなくなっていくだろう。優秀な部下からリストラ候補となるリスクさえ現実味を帯びてきかねないように思う。
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