予算は社員の自由? 上司の命令がない? 謎の組織「ホラクラシー」に迫る:理想の職場か、それとも幻想か(1/3 ページ)
社員の自律性を重視する欧米発の新たな組織論が話題に。そのうちの1つ「ホラクラシー組織」を実践する企業に直撃した。従業員が経営判断を担ったりする一方でCEOが干渉できない業務も。
上司が部下に指示を出し、仕事を管理する。日本の職場では当たり前の風景だ。ただ最近、従業員の自律性をもっと強調する欧米発の新たな組織論が注目されつつある。「ティール組織」や「ホラクラシー組織」という言葉を書店のビジネス書コーナーなどで目にした人もいるのではないだろうか。
これらの概念は、日本では「役職や社員間の序列を無くして組織をフラットにする」といった文脈で捉えられることが多いようだ。2018年には、ティール組織を紹介したビジネス書『ティール組織――マネジメントの常識を覆す次世代型組織の出現』(フレデリック・ラルー、英治出版)がヒットした。働き方改革が叫ばれる中、従業員がより主体的に働ける組織像としても期待されているとみられる。
例えばティール組織はビジネス書で「人間の作る組織形態を進化の順に並べたうち、5番目に来る段階」「組織を1つの『生命体』として捉えた形」などとよく説明される。「上司と部下の関係がない」「予算というものが無い」といった事例を紹介されることも多い。
ただ、ビジネス書やコンサルタントが提唱するビジネス理論が、これまで幾度となくブームになっては消えていったのもまた事実。今回の組織論も上記の言葉だけでは定義がちょっと分かりにくい上に、理想的と捉えられなくもない組織論が日本で実際に成り立つか、疑問に思う人も少なくないのでは。
CEOが開発チームの業務に干渉できない!?
そこで、ティール組織の中の1形態ともよく紹介され、「ロール(役割)」を通じて自律的な組織運営を目指すという「ホラクラシー組織」をいち早く取り入れたITベンチャー、scouty(東京都渋谷区)を直撃した。同社では書籍購入などの予算は各社員が自己判断で使える一方、CEO(最高経営責任者)が自社の開発チームに干渉できないこともあるのだとか。……一体なぜ?
同社は16年創業で社員・役員合わせて22人、「人工知能(AI)が天職を探し出す」とうたう転職サービスを手掛けている。SNSなどWeb上に公開されているエンジニアたちの膨大な情報を集積し、ビッグデータとしてAIで分析。主に就職サイトに登録していない「転職潜在層」の人材を掘り起こし、経歴やスキルなどと照らし合わせて活躍できそうな企業に紹介して、マッチングさせる仕組みだ。
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