人工流れ星ベンチャー、ALEの社長が描く科学の未来とは?:宇宙ビジネスの新潮流(2/3 ページ)
「人工流れ星」というキーワードで広く知られる、ALEという宇宙ベンチャー企業がある。同社の創業者である岡島礼奈氏に今後の事業展望や、基礎科学に対する秘めたる熱き思いを伺った。
人工流れ星の将来売り上げの大半は海外
先日打ち上げた初号機は、今後軌道降下ミッションを行い、20年前半に広島・瀬戸内地方で計画している人工流れ星ミッションに挑みます(※注:ALEでは数百の流星源と放出機構を積んだ衛星を打ち上げ、その後、軌道降下を行い、所定の高度から流星源を放出。大気による空力加熱で流星源が発光し、地上からそれを観測する)。他方で、既に2号機や3号機の開発も同時並行で進めています。
初号機には約400粒の流星源が搭載されていますが、3号機以降では数千粒の搭載を目指して、宇宙空間での長期運用と人工流れ星を作る回数を増やそうと思っています。
並行して事業開発も加速しています。いろいろな国から引き合いをいただいている現状を考えると、市場はグローバルにあると感じますし、将来的には売り上げの大半は海外になると見ています。
そうした活動を見据えてチーム体制も強化しています。現在ALEでは私を含めて21人が働いており、約15人がエンジニア、そのほかがいわゆる企画や事業開発です。エンジニアは常に不足していますし、今後はグローバルな事業開発を担う人材も強化していきたいと思っています。また、流れ星を地上のイベントとして楽しむためにさまざまな企業や機関との提携も進めていきます。
ALEはエンタメだけでなく、基礎科学に貢献する
当社は人工流れ星というコンセプトを多くの方々に認知いただいていることもあり、数ある宇宙ベンチャーの中でもエンターテイメント事業を主軸にしていると理解されている方が多いかもしれません。もちろんエンターテイメントは市場拡大において重要だと思っていますが、当社が目指すのはそれだけではありません。
先日、当社のミッションを「科学を社会につなぎ 宇宙を文化圏にする」と変えました。ALEの活動の根底には基礎科学に対するモチベーションがあります。私自身が天文学を専攻してきた中で、日本の基礎科学に対するアテンションをより高めたいと強く思いました。
基礎科学は一見すると現実社会と距離があるかもしれませんが、相対性理論からGPSが生まれ、素粒子論から半導体が生まれたように、社会を変える大きな力があります。将来的に人々が宇宙に暮らす時代が到来するためにも、宇宙に関する基礎科学は重要です。人工流れ星というプロジェクトを通じてより多くの人が基礎科学や宇宙産業に興味を持ってもらいたいのです。
ALEの直接的な事業として基礎科学に貢献できるとも思っています。具体的には、人工流れ星を実現することで培われる技術やノウハウを通じて、私たちが「リエントリー(宇宙から地球への再突入)」の専門家になり、さまざまな宇宙実験機会を事業として提供したり、未知の科学の解明に貢献できたりすると考えています。
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