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「組織の中で我慢」を強いる教育とは決別せよ「忍耐・協力・礼節」だけでは何も変わらない(7/7 ページ)

「固定担任制」廃止、宿題も廃止――。公立とは思えない改革を続けている麹町中学校の工藤勇一校長と、働き方改革の先頭を走るサイボウズの青野慶久社長に、これからのあるべき教育の姿や組織論を語ってもらった。

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保護者の意識変革も必要

青野: 教育改革を成し遂げるためには、保護者も意識を変えていかなければいけないのかもしれませんね。自らの意志で起業したり、自由に転職したりできる力が大切だと言われても、「やっぱりうちの子には良い大学に入って、大企業に入社してほしい」と思ってしまうかもしれない。

工藤: そうした本音は当然ありますよね。

青野: でも、長らく日本の経済を牽引(けんいん)してきた大手電機メーカーが次々と苦境に陥りました。フィンテックの登場で金融業界にも大きな変化が訪れつつあります。タクシーやホテル業界も、ITの進化によって変わらざるを得なくなっている。時間差はあっても、この波は全産業に広がっていくでしょう。それに気づいている人は、「我が子がどんな風に育っていくべきなのか」という意識も変わっていると思います。

工藤: 現実は、もう大きく変化してしまっているということですね。

青野: はい。かつては、私たちのような比較的新しい分野の会社は「ITなんて虚業だ! 怪しい!」なんて言われていました。でも今ではプロ野球を見ても「ソフトバンクホークス」とか「DeNAベイスターズ」とか「楽天イーグルス」とか、気づけば新しい会社が増えています。「大企業」のカテゴリーに私たちのような新しい会社が加わっていくことで、保護者の見え方も変わっていくんじゃないかと思います。

 「サイボウズは大企業だからぜひ入りなさい!」という言い方をする保護者が増えていくかもしれません(笑)。

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工藤: 「そして、サイボウズに入るためにはどうすればよいのか?」と考えれば、既存の教育スタイルでは厳しいと気づくかもしれませんね。

青野: そうですね。子どもが麹町中に通う3年間で、保護者も変わっていくものですか?

工藤: 変わる人は多いかもしれません。

 卒業生の例なんですが、親としてはやはり大学に行かせたいと考えていたそうです。でも実はその子は料理が大好きで、「将来はシェフになりたい」という夢があって、調理専門学校に行きたいと考えていたんですね。それでお母さんが私のところに「どうしたらいいでしょう?」と相談に来たんです。

青野: 卒業後も相談できるなんていいですね。

工藤: 私は「自分の行きたいところに進ませてあげればいいんじゃないですか」と答えました。

 進路って実は、選択の幅を広げていくよりは逆に狭めたほうが、結果として未来が広がっていくように思います。狭めた道で尖ったスキルを身につけたほうが、将来違う道を選んだときにも、そこで学んださまざまなスキルと経験が役立つんですよね。

 そんな話をしたところ、最終的にはお母さんも「覚悟しました」と。子どもは調理専門学校に進み、充実した日々を送っていると聞きました。

青野: かっこいい! 親も変わるんだ。

工藤: そのお母さんからは「麹町中に通ってよかった」と言ってもらえました。麹町中を、そして日本中の学校をそんな風にしていけたらいいですね。そうすればもっともっと活気があふれる国になっていくはずです。あちらこちらで起業する若者が現れ、課題解決をする事業に取り組む人が増えていくんじゃないでしょうか。

青野: それは夢物語なんかではないと思います。私もぜひ、一緒にコミットしたいですね。

著者プロフィール

多田慎介(ただ しんすけ)

1983年、石川県金沢市生まれ。個人の働き方やキャリア形成、企業の採用コンテンツ、マーケティング手法などをテーマに取材・執筆を重ねている。


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