生産性向上の第一人者が厳選した“出社したくなるオフィス”5社:あなたの職場でもきっとできる(1/5 ページ)
NTTデータ、Google、味の素、タマノイ酢、オトバンク……。「テレワーク時代」が到来する中、従来のオフィスの在り方を見直し「社員が来たくなるオフィス」作りに工夫を凝らしている企業もある。
日本でもようやく「テレワーク」を取り入れる企業が増えてきた。テレワークとは、自宅などオフィス以外の場所で働くことを認める勤務形態だ。通勤時間と労力の削減、身支度の軽減、プライベート時間の増加、業務の安定運用、従業員が居住する地域の経済活性などさまざまな効果が期待されている。
総務省は7月23日から27日にかけてテレワーク促進のための「テレワーク・デイズ」を主導し、企業・自治体・官公庁の参加とテレワークの実施を呼びかけた。ただ、テレワークが一般に広く浸透しているかというと、決してそうともいえない。
エン・ジャパンの調査によると、テレワークの経験者は全体のわずか4%。かつ、60%はテレワークという働き方すら知らないことが分かった。働き方改革の事情に詳しい内田洋行知的生産性研究所の平山信彦所長は「テレワーク自体の認知は進んでいるものの、『育児や介護をする人のための施策』という理解が強く、一部の人以外は興味を持っていないのが多くの企業の実態」だと指摘する。テレワークが定着するにはまだまだ時間がかかりそうである。
働き方の多様性を高め、雇用を拡大する手段の1つとしてテレワークは大変有効だ。時間はかかれど、今後さまざまな職種や業種で間違いなく広がるだろう。一方、「テレワーク時代」だからこそ、従来のオフィスの在り方を見直し、「社員が来たくなるオフィス」作りに工夫を凝らしている企業もある。
「料理好き」集まり雑談 引き寄せられる「卒業生」
株式会社オトバンク(東京都文京区)は「耳で読む本」であるオーディオブックなどの音声コンテンツサービスを提供する企業であり、働き方の面でも注目を集めている。2016年には「満員電車禁止令」を実施した。社員は自身の判断で、出社時間も退社時間も自由に決められる。無理をして満員電車に揺られ、仕事のモチベーションを下げる必要はない。
同社は、先んじてテレワークも導入した。ディレクター、ライター、営業など、同社の社員の職種は多岐にわたる。多様なメンバーが、自分のモチベーションや生産性が上がる効率の良い働き方を主体的に実施できるよう環境を整えているのだ。
多種多様な働き方を促進する一方、同社はオフィスにおけるコミュニケーションのきっかけ作りにも工夫を凝らす。オトバンクでは、月1回オフィスでの飲み会を実施している。食事は、料理好きな社員が集まって腕を振るう。鍋ものや時にフルコースなど、こだわりのメニューによってその後の雑談のきっかけ作りにもなっている。
同社広報担当の佐伯帆乃香氏によれば、社員は自分の仕事が終わったタイミング、あるいは気晴らししたいタイミングで「ちょっと顔を出して、さっと帰れる」。長々と拘束されることはない。社内なので、他の社員に込み入ったことも相談しやすい。テレワークをしていた社員が、料理を楽しみに夕方から出社することもあり、まさに「出社したくなるオフィス」なのだ。
ところが、最近になってオトバンクはオフィス飲み会を終了。ランチ会に変えた。「「満員電車禁止令が浸透したので、早朝に出社して夕方に帰る社員がいたり、高校を卒業した社員(未成年)が入社したりしたこともきっかけになり、飲み会からランチ会にシフトした」と佐伯氏は言う。従来のオフィス飲み会の趣旨は変えず、時間帯を夜から昼にシフトした。取締役が自分のお気に入りの一品を持ち寄ったり、社長が自らおにぎりを買ってきて振る舞ったりするシーンもある。
ともすれば形骸化しがちな社内コミュニケーションの制度や習慣。オトバンクは、本来の目的を見失わず、環境の変化、社員の年齢やライフスタイルの変化に応じて柔軟に変えている。同社には、退職した社員が立ち寄ることも珍しくないという。オトバンク社長の久保田裕也氏は「会社にいながら外の情報が入る。そこから新たなアイデアが生まれることもある」と語る。「出社したくなるオフィス」は、会社の枠を超えた井戸端会議のような役割を果たしているのかもしれない。
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