「ねるねるねるね」が再成長 “健康に悪い”イメージを払拭できたワケ:最大の“売り”が裏目に(3/4 ページ)
発売から30年以上経った今も、多くの子どもから親しまれるお菓子がある。これまで8億個以上も売り上げてきた「ねるねるねるね」だ。そんなねるねるねるねがいま、再成長を遂げてる
「色が変わる」「膨らむ」仕組みを公開すべきか……
商品パッケージをリニューアルするにあたり、社内で最も意見が割れたテーマがある。それは、粉と水を混ぜると色が変わったり、膨らんだりする仕組みを公開するかどうかということだった。
なぜ粉と水を混ぜると色が変わるのか。それは、酸性とアルカリ性の物質を混ぜると色が変化するという色素の性質を利用しているからだ。また、紫キャベツの葉やクチナシの果実などの色素を使用することで、合成着色料に頼ることなくカラフルな色合いを表現している。
モコモコと膨らむ原理はこうだ。クエン酸と重曹を反応させると炭酸ガスが発生する。そこに卵白などを混ぜてクリーム状の泡に仕上げて膨らませている。つまり、健康を害するような成分を使っていないことが分かる。
なお、現在では、ねるねるねるねに含まれる成分や色が変化する仕組み、膨らむ仕組みの詳しい解説が商品パッケージだけではなく公式Webサイト上でも確認することが可能だ。
この仕組みを商品パッケージに明示し、ねるねるねるねが安心して食べられるお菓子であることを訴求できれば、得体が知れないと訝しむ人の不安は解消できるかもしれない。
だが、社内には「商品の特徴が薄れてしまうのではないか」「他社に模倣されてしまうのではないか」といった意見が飛び交った。
「色が変わる・膨らむ仕組みについては、ねるねるねるねの肝としてずっと公にすることを避けてきました。特に研究開発チームからの反発は強く、手の内を明かすことに難色を示していました。当社の役員からも公開に反対する意見が挙がり、なかなか方針が定まりませんでした」
それでも、市場調査の結果や世の中の流れ、何よりも売り上げの減少が加速し始めている現状を踏まえれば、消費者にこれまでとは違ったアプローチを試みる価値は大いにある。マーケティング室のメンバーらは客観的なデータを用いて「なぜ売り上げが減少しているのか」「なぜリニューアルすべきなのか」「なぜ情報を公開すべきなのか」を丁寧に説明し続けた。
最終的には情報を公開するという形で同意を得たわけだが、プレッシャーは大きかったという。「反対意見も多い中、なんとかこぎつけたリニューアルだったので『これで失敗したらどうしよう……』という不安は当然ありました」と振り返る。
味についても酸味を抑える微調整を実施。その結果、11年に売り上げは増加に転じ、今ではピーク時の8割程度まで戻ったという。競合が増えた現在の環境を踏まえれば大健闘と言えるだろう。
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