焼き鳥からうどんへ“華麗”にシフト トリドールが戦略転換できたワケ:丸亀製麺で有名(4/4 ページ)
セルフうどん店の「丸亀製麺」で急成長したトリドールHD。実はもともと焼き鳥チェーンを経営していた。どうして畑違いともいえる別業態でも成功できたのか。
収益性を高める工夫
丸亀製麺の大成功は売り上げ規模の拡大だけではなく、同社の収益性も高めました。ここでトリドールHDの決算資料などを分析していきます。
同社のセグメント(業態別)の原価率を見ていきます(原価率については、期末、期首棚卸額が加味されていないため、正確には仕入率となります)。
これを見ると以前の主力業態であった「とりどーる」の原価率が30.6%であるのに対して、「丸亀製麺」の原価率は25.6%と5%も低いことが分かります。「たかが5%」と思われる方もいるかもしれませんが、年間合計の売り上げが900億円を超える丸亀製麺における5%は45億円になります。
さらに決算書を読み進んでいくと、時代の変化に合わせて戦略転換を行ってきた同社の次の戦略が垣間見えてきます。地域別の店舗数の伸び率を見ていきます。
こちらを見ていただくと、海外店舗数の伸び率に驚かされます。17〜18年の1年間で、194店舗を出店し(M&Aなども含む)、対前年伸び率は1.5倍にもなります。今後、人口減少などで成長が懸念される国内外食マーケットを見据え、海外出店戦略を強めています。
一方、国内の人材不足に対して、丸亀製麺ではシニアスタッフを積極採用するといった対策にいち早く着手しています。
このように、時代の流れを踏まえた上で、その事業フェーズにおける経営リスクに対しても戦略的、かつスピーディーな戦略転換で適応していく経営姿勢が同社の成長や強い経営基盤の一因となっていると言えます。
著者プロフィール
三ツ井創太郎
株式会社スリーウェルマネジメント代表取締役。大学卒業と同時に東京の飲食企業にて店長などを歴任後、業態開発、FC本部構築などを10年以上経験。その後、東証一部上場のコンサルティング会社である株式会社船井総研に入社。飲食部門のチームリーダーとして中小企業から大手上場外食チェーンまで幅広いクライアントに対して経営支援を行う。2016年に飲食店に特化したコンサルティング会社である株式会社スリーウェルマネジメント設立。代表コンサルタントとして日本全国の飲食企業に経営支援を行う傍ら、日本フードビジネス経営協会の理事長として店長、幹部育成なども行っている。著書の「飲食店経営“人の問題”を解決する33の法則(DOBOOK)」はアマゾン外食本ランキングの1位を獲得。
関連記事
- 「回転しない寿司」路線から6年 元気寿司が思い知った“意外な効果”
大手すしチェーンの元気寿司が「脱・回転」路線を打ち出している。回転レーンをやめて、注文された商品のみを特急レーンで提供。国内の152店のうち122店を「脱・回転」させた結果、思わぬ効果が生まれた。 - 女子向けワイン酒場「ディプント」をヒットさせたプロントの“緻密な戦略”
プロントが運営する女性向けワイン酒場「ディプント」。2009年に1号店をオープンしてから40店舗近くまで増えた。ヒットの要因と強さの秘密を解き明かしていく。 - 家賃が200万円もするのにスタバがもうかる理由
スタバは大都市の一等地に多くの店舗を構えている。1杯数百円のコーヒーを販売しており、店に長居するお客も多い。家賃が200万円以上するような場所でも利益が出せる秘密とは? - 「指混入」だけじゃない 幸楽苑が日高屋に負けた理由
ラーメンへの異物混入事件でブランドイメージを大きく損なった幸楽苑。この事件が現在に至るまでの不振の原因として指摘される。しかし、本質的な敗因は別のところにもあった。 - ライバルと明暗 栄華を誇った「小僧寿し」だけが大きく苦戦した理由
かつて2300店超を誇った「小僧寿し」だが、近年は回転すしや持ち帰りすしチェーンの猛追で苦戦していた。同じ持ち帰りのチェーンが踏みとどまってるのになぜ小僧寿しだけ苦戦しているのか。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.