本当に同じ店? 外装をどんどん変える「焼肉きんぐ」の狙い:大手チェーンなのに(3/4 ページ)
一般的に、大手チェーンの看板や外装は劇的に短期間で変わらない。しかし、業界大手の「焼肉きんぐ」は20年の間に、外装計画を何度も変えている。「同じ店なの?」と思ってしまうほど変化させる理由とは?
時代にあわせたベストを探る
なぜ、焼肉きんぐはこれほど外装をどんどん変えてきたのだろうか。物語コーポレーションのマーケティング担当役員の堀誠氏は「時代に合わせたベストにしていくため」と説明する。
同社は「一度はじめた商売はやめない」(堀氏)という方針を掲げている。焼き肉店やラーメン店をはじめたら、途中で投げ出さないようにしているのだ。
同社は店を存続・発展させるため、お客のニーズや競争環境の変化に合わせて、お店のメニューを柔軟に変えている。例えば、丸源ラーメンの主力商品は当初しょうゆラーメンだったが、とんこつラーメン、肉そば、熟成しょうゆラーメンと4回も変わった。外装のデザインを大きく変えるのもこの戦略に沿ったものだ。
では、なぜこのような戦略を採用するようになったのか。それは、同社の立地戦略と関係がある。ロードサイドに良い土地が見つかった場合、同社ではすぐさまそこを押さえ、繁盛しそうなお店をオープンさせる。吉野家やマクドナルドといったように、全国的な認知度があるお店ならば「どんな商品をどのくらいの価格で提供する店なのか」ということをお客にアピールする必要はない。しかし、出店先のエリアで「焼肉きんぐ」のブランドが認知されていないケースもあるので、外装で「どんなお店なのか?」を知らせる必要があるのだ。
外装を変えれば売り上げは2倍になる
これまで、外装の話を中心に解説してきたが、焼き肉チェーンとして成長するには、サービスやメニューをブラッシュアップすることも必要だ。堀氏は「お客さまが『来る仕掛け』『満足する仕掛け』『また来る仕掛け』が重要です」と指摘する。
店舗に来たことのないお客を呼び込むには、各種販促に加え、外装は重要な武器になる。店の前を多くの車が通り過ぎるので、チラシを何万枚配布するよりも、お客の目に直接情報を届けたほうが効果がある場合もある。
しかし、来店したあとに「思ってたのと違う」と落胆させては意味がない。サービスや商品力で、いい意味でお客の期待を裏切ったり、イメージ通りだと思わせたりする必要がある。そして、満足してもらえれば、また来店してもらえるというわけだ。
ただ、焼肉きんぐの場合、食べ放題がサービスの中心なので客単価は固定されている。売り上げをアップさせるには、客数を増やしつづける必要がある。新規客を呼び込むため、効果的な外装計画は欠かせない。
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