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タレントの薬物問題に、企業はどう対応すべきかスピン経済の歩き方(4/7 ページ)

ピエール瀧さんの逮捕を受け、多種多様な企業がその対応に追われている。CMや広告はすべてお蔵入りになったわけだが、役者やアーティストとして関わっている作品まで自粛すべきなのか。この問題に対して、筆者の窪田氏は……。

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90年代に「何か」があった

 では、いつから変わったのか。尾崎逮捕から12年後の99年、槇原敬之さんが覚せい剤所持容疑で逮捕されたときは、今のような自主回収が行われている。ということは、90年代に「何か」があったということである。

 それは、タレントの罪を「作品」にまで波及させるのが当たり前となるような、衝撃的な事件である。と言うと、勘のいい方はもうお気づきだろう。勝新太郎さんの「パンツ事件」だ。

 90年1月、ハワイの空港で勝さんは下着の中にマリファナとコカインを入れて現行犯逮捕された。後に会見で「もうパンツは履かない」という迷言を残したことはあまりに有名だが、日本の企業危機管理の常識を変えたことはあまり知られていない。

 実はこの事件によって、わずか1日のオンエアで消えたCMがある。キリンビールの「ラ党の人々。」である。これは新商品「キリンラガービール」を売り出すため、まさにキリンの社運をかけた一大キャンペーンだった。

 タレント逮捕でCMお蔵入りというのは、この時代でも決して珍しい話ではなかったが、この「ラ党の人々。」が世間にインパクトを与えたのは、これがただのCMではなかったからだ。つかこうへいさんが演出し、松坂慶子さんや国広富之さんなどそうそうたる実力派俳優をそろえて、1年間かけて放映されるCMドラマだったのだ。

 今でこそこの手のドラマ仕立てのCMはさして珍しくないが、当時はかなり斬新で、世間の注目度も高かった。そんな莫大な費用をかけた「話題のドラマ」が、主演俳優の逮捕でわずか1日の放映で打ち切りになる。こうなると、「タレント個人の不祥事と作品は別」なんて寛容なことは言ってられない。事実、その後に勝さんはCM制作会社から損害賠償請求され、そちらも大きなニュースとなっている。

 この衝撃的な出来事が、現在のような「タレントの罪=作品も罪」というトレンドを生み出したのではないか、と個人的には考えている。

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