なぜ「翔んで埼玉」はセーフで、「ちょうどいいブス」はアウトなのか:スピン経済の歩き方(3/5 ページ)
「自虐」を前面に押し出すことで、世間の関心を集める「自虐マーケティング」が盛り上がっている。「じゃあ、ウチもさっそくやってみよう」と思いたったマーケティング担当者がいるかもしれないが、気をつけていただきたいことがある。それは「地雷」があることだ。
地方の「自虐」は「自慢」の裏返し
さて、ざっとこれまで「成功」とされてきた自虐マーケティングを見てきたが、ある共通点があることがお分かりだろう。それは、「自分自身をネタにする」というユーモアと、「とか言いながらも、結局は大好きなんですよ」という「愛」である。
このあたりは地方自治体の自虐が分かりやすいが、自分たちの町には名所がないし何も誇れるものがない、イナカだ、とディスりながらも、その根底にあるのは「でもなんやかんや言っても、すごいいいところなんですよ」という「おらが村自慢」の気持ちが隠れている。
この自慢の裏返しの自虐というのは古くは、吉幾三さんの大ヒット曲「俺ら東京さ行ぐだ」や、『翔んで埼玉』と同時代に社会現象になった漫画『Dr.スランプ』にも見られる。
「俺ら東京さ行ぐだ」は、テレビもねえ、ラジオもねえ、と東北の田舎をディスっているように聞こえるが、結局は「東京でベコ飼うだ」「銀座に山買うだ」と東京に迎合する気ゼロで締めていることからも分かるように、遠回しに「田舎」への愛を歌った曲である。
また、『Dr.スランプ』の舞台となる「ペンギン村」は、都会の人たちから「イナカ」とバカにされているが、アラレちゃんをはじめ、そこで暮らしている人々はみな幸せに描かれている。
つまり、地方の「自虐」とは「自慢」の裏返しなのだ。
これは企業の自虐にも言える。これまで見てきたように、自社製品をイジっているものの、けなしているわけではない。「と言いながらも、ホントいい製品なんですよ」という「愛」が根底にある。だから、それを見させられている人たちも不快に感じないのだ。
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