なぜ「翔んで埼玉」はセーフで、「ちょうどいいブス」はアウトなのか:スピン経済の歩き方(4/5 ページ)
「自虐」を前面に押し出すことで、世間の関心を集める「自虐マーケティング」が盛り上がっている。「じゃあ、ウチもさっそくやってみよう」と思いたったマーケティング担当者がいるかもしれないが、気をつけていただきたいことがある。それは「地雷」があることだ。
炎上してしまった「午後の紅茶」
しかし、残念ながら炎上をしてしまったケースにはこのような視点がごそっと抜けている。分かりやすいのが、昨年のキリン「午後の紅茶」のケースだ。
キリン公式Twitterで、「私の周りにいる……かも!?」ということで、「午後の紅茶」を飲んでいそうな女性として、「モデル気取り自尊心高め女子」「ロリもどき自己愛沼女子」「仕切りたがり空回り女子」「ともだち依存系女子」という4パターンの女性像をイラストにしてリツイートなどを呼びかけたところ、「顧客をバカにしている」などの批判が殺到して、投稿削除、謝罪へ追い込まれたのだ。
企業側からすれば、「自社製品を飲んでいる人」を自虐的にイジって、「あー、いるいる」「分かる、分かる」とクスリとしてもらいたかったのはよく分かる。事実、メディアの取材に対して、キリンは「午後の紅茶に親しみを感じていただくため」と回答している。
ただ、残念ながらそこには、「自分自身をネタにする」というユーモアと、「とか言いながらも、結局は大好きなんですよ」という「愛」は感じられない。
中でも致命的なミスは、自社製品である「午後の紅茶」をネタにしてないことだ。「午後の紅茶を飲んでそうな女性」という他者をイジってしまっていることで、「自虐」ではなく「他虐」になってしまっている。
日清が過去にまったく売れなかった3種類の商品を再発売して、「今度こそ売れて欲しい 黒歴史トリオ」などと特設サイトをつくって話題になったが、「自分」はいくらでもネタにしていい。しかし、「客」は他人なので、それをイジるのは単なる「他虐」なのだ。
そして、このような他虐のワナに最も陥りやすいテーマが「女性」なのだ。
企業や自治体としては、あくまで「自分自身をネタにしている自虐ネタ」という意識があっても、そこに女性を絡ませてしまうと、受け取る側からすると、「女性をディスる他虐ネタ」と見えてしまうのだ。
分かりやすい例が、「ちょうどいいブス」だ。
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