なぜ「小僧寿し」は危機に陥ったのか 犯人は“昭和のビジネスモデル”:スピン経済の歩き方(2/5 ページ)
「小僧寿し」が債務超過に陥った。苦境の背景に「持ち帰り寿司の限界」とか「多角経営が裏目に」といった声が出ているが、本当にそうなのか。筆者の窪田氏は違う見方をしていて……。
小僧寿しは何が問題だったのか
そういうライバルたちの状況を踏まえると、今回の現象は、「持ち帰り寿司業態の限界」などではなく、「小僧寿しという業態の限界」と捉えるべきなのだ。
では、小僧寿しは何が問題だったのか。
「麺や小僧」なんてラーメン事業や宅配寿司事業など手当たり次第で参入したのが悪いという専門家もいらっしゃるが、先ほど紹介したように、ライバルは多角経営で成功を収めている。そこまで奇策に打って出たわけではないのに、小僧寿しだけがここまでひどい結果になったのはなぜか。
いろいろなご意見があるだろうが、個人的には、人口右肩上がりで、需要も右肩上がりということを前提とした「昭和のビジネスモデル」から脱却できなかったことが大きいと思っている。つまり、明日は今日よりもプラスになる、来年は今年よりももっと成長をしている、という「右肩上がり幻想」にとらわれた経営判断を下し続けてきたことのツケが回ってきたのだ。
平成生まれの方たちには、あまりピンとこないかもしれないが、1972年に設立された小僧寿しほど「昭和」を体現した外食チェーンはない。
高度経済成長の波に乗って拡大路線をひた走り、昭和54年(1979年)には売上高531億円をあげ外食産業日本一の規模に輝くと、昭和62年(1987年)には、なんと全国で2300店舗を展開した。
この数字がいかにすごいかは、平成日本の寿司チェーンの規模を見ていただければ分かる。回転寿司業界店舗数1位のスシローは全国で518店舗(2019年4月現在)、京樽もホームページで店舗数を検索したら168店舗。当の小僧寿しでさえも、ホームページで店舗検索をすると、201店舗だ。
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