続・スバルよ変われ(前編)――STI社長インタビュー:池田直渡「週刊モータージャーナル」(3/5 ページ)
スバルの問題点を指摘した記事『スバルよ変われ』。そこで書いた「安全と愉しさ」だけでもなく、スバルの中期経営計画(中経)についても疑義があった。それは手の内を何も明かさない中経に何の意味があるかという疑問だ。スバルはもっと情報を開示し、スバルとはどういう価値を生み出す会社なのか。
二律背反を技術によってブレークスルーする
平川 STIのやっている小さな例で言えば、「走行抵抗を小さくするとダウンフォースは減っちゃいます」という教科書の最初に載っていることをそのまま受け取るのではなく、走行抵抗を減らしながら、ちゃんと地面に張り付いたように走るクルマを作るためにはどういうところにどういう技術を折り込めばできるのか。
池田 つまり二律背反を技術によってブレークスルーしていくんだということですか?
平川 そういうものの積み重ねが、経済合理性だけのシェアリングから、感動を含めたシェアをするということです。さらにその先には、ただ感動してもらうだけではなく、お客様の生命をどんなことがあっても守りますという3軸目をスバルは付け加えたいと思います。われわれはあなたとご家族の命を完全に守ります、スバル車がある周辺の社会と生活を守りますので、豊かな生活をいつでもどこでも感じてくださいと。そういう考え方です。
池田 なるほど。それは素晴らしいですね。しかしあえて申しますが、そういう骨太な理念がどうして中経に書かれていないんですか? それを読み取れといわれても難しいですよ。
平川 はい。ので、ので、ので、遠くない時期に今お伝えしたような「安心と愉しさ」を分かりやすく定義してお客様と共有したい、実現したい。ありたい姿を示して、それの具体的な技術メニューを示していくことを、やっていきたいのです。ただいっぺんにはご提示できないので、少しずつ少しずつ責任を持ってやっていく必要があります。
池田 これから発表するコミットメントにいい加減な雰囲気があったら大変なことになると思います。
平川 おっしゃる通りです。
池田 ただそこはきちんとステップを踏まえていくことは大事だと思います。しかし一方で果断にメッセージを出していかないと、ただ黙っているように見えてしまう可能性があります。
平川 それはマズいです。吉永(会長)も中村(社長)も事あるごとに発言しているかと思うんですけれど、ある面、日本語のいい所でもあるんですが、コミットメントを共有するという意味では、主語が無い言い方になりがちで、それが昭和言葉みたいに言われているのだと思います。だからちゃんと主語と述語を付けて明確に示す必要があると思います。
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