2015年7月27日以前の記事
検索
連載

続・スバルよ変われ(前編)――STI社長インタビュー池田直渡「週刊モータージャーナル」(5/5 ページ)

スバルの問題点を指摘した記事『スバルよ変われ』。そこで書いた「安全と愉しさ」だけでもなく、スバルの中期経営計画(中経)についても疑義があった。それは手の内を何も明かさない中経に何の意味があるかという疑問だ。スバルはもっと情報を開示し、スバルとはどういう価値を生み出す会社なのか。

Share
Tweet
LINE
Hatena
-
前のページへ |       

環境や安全、地球保護を技術で

池田 私は、物事を決めていくに際して、エンジニアはノブレス・オブリージュを持つべきだと思っています。お客さんの声は大事です。だけどお客さんの声を聞いてあれもこれも進めていくと、全てが平等でプライオリティがつかなくなっていってしまいます。いろいろ大事だけれど、それでも「安心と愉しさ」の理念に沿っていけば揺らがない順序がある。そういうものをエンジニアが、ユーザー以上にユーザーの立場に立って考えるべきだと思うのですよ。

 今、こういう状態ですからメディアも含めた外部の声についつい平身低頭してしまいそうになる。それは人情として分かりますが、それは違うと思うんです。主体的に価値を判断する姿勢を放棄してはいけない。夜郎自大になってはいけないし、社会の声に耳を貸すことはとても大事ですが、ただ無条件降伏のように言うことを聞いちゃうのも違うと。

平川 はい。先ほど言いました土台に据えるべき環境や安全、地球保護。そういうことを考えるときにも、それが環境のための電動化だといって、鉱山で希土類をいっぱい掘り起こしてどんどん使うのはおかしいと思っていますし、そういう問題をブレークスルーする技術を主体的に考えていきたいと思います。

池田 よく分かります。ただ希土類の使用を減らすためにどういう技術をやるのかというところを是非もっと伝えて欲しいんです。

平川 例えばモーターでいえば、小さい体積のまま磁界面積を増やす。それにはローター(回転子)とステーター(固定子)の磁界の面積を増やしてやる。磁界面をジグザグに作ってやれば、出力を出しつつ小型化できるはずです。

池田 つまり多板クラッチのような構造でモーターを作ってやれば、小型化できるということですね。

平川 その通りです。技術は日々進化していくんですけど、ある所で不連続に乗り換えなきゃならない場面があるんです。でそういう不連続な乗り換えのときにはスバルの規模では両方やれないんです。将来のお客様のためには旧技術を手仕舞って、新技術に移っていく勇気も必要なんだと思います。だからそれをテーブルの上に出す。それは2軸目なんで、3軸目で何をやるべきかといえば、単に自動車という領域ではなくって、スバルだからできる業態を30年後、40年後に実現していかなくてはならないと思います。


 スバルは、今中期経営計画をアップデートしようとしている。続編では、その新しい時代のスバルのフラット4と、スバルの空飛ぶクルマの話へとつながっていく。

筆者プロフィール:池田直渡(いけだなおと)

 1965年神奈川県生まれ。1988年企画室ネコ(現ネコ・パブリッシング)入社。取次営業、自動車雑誌(カー・マガジン、オートメンテナンス、オートカー・ジャパン)の編集、イベント事業などを担当。2006年に退社後スパイス コミニケーションズでビジネスニュースサイト「PRONWEB Watch」編集長に就任。2008年に退社。

 以後、編集プロダクション、グラニテを設立し、クルマのメカニズムと開発思想や社会情勢の結びつきに着目して執筆活動を行う。


前のページへ |       

Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.

ページトップに戻る