なぜ「プリウス」はボコボコに叩かれるのか 「暴走老人」のアイコンになる日:スピン経済の歩き方(7/7 ページ)
またしても、「暴走老人」による犠牲者が出てしまった。二度とこのような悲劇が起きないことを願うばかりだが、筆者の窪田氏は違うことに注目している。「プリウスバッシング」だ。どういう意味かというと……。
「暴走老人」に対する現実的な対策
実は「踏み間違え」は高齢者だけの問題ではない。AT車が導入された30年以上前から数々の事故を起こしていて、今回のような悲劇が起きるたび、国会や専門家の間で「左足ブレーキ」の必要性が訴えられてきた。
右足だけでアクセルとブレーキを同じように踏むから、認知機能に問題が起きると、大暴走をする。右足をアクセル、左足をブレーキと決めれば、右と左の区別がつかないほど認知機能の低下が進行しない限り、「アクセルが戻らない」なんてつぶやきながらアクセルをベタ踏みして、時速100キロで人を跳ね飛ばすなんて事態は防げる。
極めて合理的な解決方法だったが、「マニュアル車の運転との整合性」という、いかにも役所らしい理由で却下されてきた。
「左足ブレーキ」と聞くたびに、役人や専門家は「現実的ではない」「先端技術で暴走を未然に防ぐのが現実的」と渋い顔をして言うが、これだけ技術が進んでも、「踏み間違い」というヒューマンエラーで膨大な数の人間が殺されている「現実」についてはどう考えているのか。
この問題は、右足1本ですべてを操らせるという「無茶な動作」が引き起こしているのは明白だ。先端技術の開発を進めながらも、これ以上犠牲者を出さないためにも今すぐできる対策から打っていく、というほうがよほど「現実的」ではないのか。
最後になりましたが、お亡くなりなったお母さんと娘さんのご冥福を心からお祈りします。合掌。
窪田順生氏のプロフィール:
テレビ情報番組制作、週刊誌記者、新聞記者、月刊誌編集者を経て現在はノンフィクションライターとして週刊誌や月刊誌へ寄稿する傍ら、報道対策アドバイザーとしても活動。これまで300件以上の広報コンサルティングやメディアトレーニング(取材対応トレーニング)を行う。
近著に愛国報道の問題点を検証した『「愛国」という名の亡国論 「日本人すごい」が日本をダメにする』(さくら舎)。このほか、本連載の人気記事をまとめた『バカ売れ法則大全』(共著/SBクリエイティブ)、『スピンドクター "モミ消しのプロ"が駆使する「情報操作」の技術』(講談社α文庫)など。『14階段――検証 新潟少女9年2カ月監禁事件』(小学館)で第12回小学館ノンフィクション大賞優秀賞を受賞。
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