Kyashがカード決済技術を企業に提供 売上金やポイントをVisaで利用できる「Kyash Direct」(2/2 ページ)
KyashがVisaのプリペイドカード発行ライセンスを取得し、個人向けウォレットアプリで培ったカード決済プラットフォームを企業に提供する。企業は、自社が管理する売上金やポイントなどを決済に利用できるクレジットカードを、提供できるようになる。
カード発行と運用に必要な基盤をワンストップで提供
従来、このような取り組みを行うには複数の企業との連携が欠かせなかった。Visaの発行ライセンスを持つイシュアーと呼ばれる銀行やカード会社と提携し、さらに決済システムをシステムベンダーと契約して構築するのが一般的だ。
Kyashはこのたび、日本国内のVisaプリペイドカードの発行ライセンスを取得。ウォレットアプリで培った決済システムと合わせて、カード発行からシステム運用までワンストップで提供できる体制が整った。従来、ライセンスは大手銀行やカード発行業者にしか発行されていなかったが、Visaは昨今Fintech企業のサポートを強化しており、決済の高度化を推進していることが背景にある。
「従来は複数社が関わるため、開発には早くても1年前後かかっていた。Kyash Directを使うことで、2、3カ月で実現でるようになる。開発費用も数百万から数千万必要だったが、Kyashとのレベニューシェアを前提とすれば初期費用も抑えられる」(鷹取社長)
Kyash Directは初夏にリリース予定で、すでに複数社と契約締結に至っているという。「もともと多くの企業から相談を受けていた。一つはKyashのようなウォレットを自社ブランドで提供できないかという話、もう一つは自社の売上金を直接ユーザーが使えるようにしたい、自社店舗だけでなく広範に利用できるようにしたいというニーズだ」(鷹取社長)
金融の複雑な仕様をWeb標準に変換 カード発行と決済をクラウドで提供
企業側の開発を容易にするため、金融の複雑な仕様を、Kyash側でWeb標準に変換する仕組みも盛り込んだ。これにより、企業側はポイント残高や売上残高を自社で管理したまま、カード決済に利用できるようになる。
「複雑なオーソリ(与信)電文を、(Webで一般的な)json形式に変換して企業側に投げる。企業側の与信結果もjson形式で返せば、Kyash Directがオーソリ電文に変換する」(椎野氏)
決済情報は、リアルタイムに企業側に通知するため、企業側は自社のアプリを通じてユーザーに決済結果を伝えることも可能。利用履歴などを表示するAPIなども提供する。チャージ手段の自動・手動の選択、利用制限額、利用可能な業種なども柔軟に設定可能だ。
Kyashが取得した発行ライセンスはプリペイドカードにとどまるが、ウォレットアプリで実現しているように、プリペイド残高がゼロの場合はリアルタイムにチャージを行うことで、実質的にデビットカード的な使い方も可能だ。さらに、企業側が決済代金の処理タイミングを調整すれば、一般的なクレジットカードと同じポストペイ的なサービスも提供できるとしている。
今後、Kyashは個人向けのウォレットアプリのほか、企業向けのKyash Directの2本柱でビジネスを進める。企業向けに優れたサービスを提供するために、ノウハウを獲得できる場として個人向けサービスの強化も継続する。
「Kyash Directの意義は、Kyashのアプリを通じて培ったノウハウをフィードバックできること。例えば不正利用がどういう傾向で起きているのか、どういう利用店舗が多いのかなどの情報を、企業側が活かすことができる」(鷹取社長)
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