豊洲市場の吉野家が面白い 「時給1500円」に「超少ないメニュー数」:ここにしかない要素が満載(2/5 ページ)
2018年10月に吉野家の1号店は築地から豊洲市場に移転した。他店とは違うユニークな運営がされている。創業精神を受け継ぐお店に行ってみた。
「ミスター牛丼」も働いていた1号店
アルバイト出身ながら1992年に吉野家の社長に就任し、「ミスター牛丼」とも呼ばれた安部修仁氏も築地の1号店で正社員として働いていたことがある。当時、安部氏は500人以上の常連(ほとんどが市場関係者)の顔といつも食べるメニューを記憶しており、お客が何もいわなくても「つゆだく」や「大盛」の牛丼を提供していたという。日本経済新聞社の取材に対し、安部氏は「たかだか客単価数百円のファストフード店が、お客さまの隅々まで気を配るサービスを実現していたのです」と語っている(関連記事:ミスター牛丼、原点はバイトの賄い飯 吉野家HD会長)。この考えは、現在も同社に受け継がれている。例えば、業務の効率化を推進する一方で、お客との接点を減らしたくないという方針から、吉野家では店舗に券売機を設置していない。
築地の1号店は席数わずか15席、営業時間は午前5時〜午後1時で、1日に1000人以上のお客が来店していたという。このように、築地の1号店というのは吉野家にとって特別な存在だったのだ。
築地発のメニューも
築地店だけで通用していた“特殊オーダー”もある。例えば、「アツシロ」「ツメシロ」という用語がある。ツメシロとは、冷ましたごはんの上に牛丼の具を盛り付けることを意味する。ごはんがアツアツだと食べるスピードが落ちてしまうので、急いで胃袋に流し込みたいお客に配慮したものだ。一方、アツシロは通常よりアツアツのごはんを提供する。
築地で生まれたメニューが全国に展開された例もある。それは、ご飯の上にある牛丼の具「アタマ」の量を通常より増やした「アタマの大盛」だ。同様に、玉ねぎを多めにする「ネギダク」も築地生まれだ。
丼も築地ならではの仕様になっていた。他店と違い、オレンジ色の柄の丼を使っていたという。
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