紙の地図はどう変わったのか? 銀行のロゴが消えた理由:水曜インタビュー劇場(令和初日公演)(4/6 ページ)
とうとう平成の時代が終わった。この30年を振り返ると、就職氷河期があったり、携帯電話が普及したり。さまざまな出来事があったが、記者が注目しているのは「紙の地図」である。昭和から平成にかけて、どのような変化があったのか。地図を作製している昭文社の担当者に聞いたところ……。
どのようにして「分かりやすく」したのか
土肥: 文字サイズを大きくしたのは、地図だけではありません。新聞もそうですよね。文字サイズを大きくして、1行当たりの文字数を減らしていきました。
竹内: 先ほども申し上げましたが、利用者からは「拡大してほしい」「文字を大きくしてほしい」という声が多かった。ただ、ページ数をどんどん増やすわけにはいきません。では、どうしたのか。「分かりやすくしてほしい」という声に対応すれば、ページ数を増やさずに済むのではないかと考えました。
例えば、道路標識の看板をそのまま地図に掲載すると、見えにくくなる。「東京駅」の場合、英語で「Tokyo Sta.」と書いていますし、山手通りの場合、「Yamate-dori」と書いている。同じように表記すると、ものすごく読みづらくなるので、そういうものはとっているんですよね。あと、道路標識の場合、青地に白色で書かれていますが、地図上で同じようにすると見えにくくなる。ただ、全く違う色にすると、利用者が混乱するかもしれないので、交差点名は青色で記しています。
土肥: 地図をよーく見ると、コンビニとかファストフードなどは、各社のロゴになっていますね。
竹内: これも分かりやすくするために、デフォルメをしているんです。例えば、ローソンの場合、「LAWSON STATION」という文字が入っているのですが、地図のロゴには入っていません。地図上に表示されている線や記号などを「凡例」と呼ぶのですが、この数は平成に入ってものすごく増えました。
土肥: (地図を見比べて)うわっ、確かに! 1988年に出版された地図を見ると、高速道路や鉄道などのほかに、目印になるものは数えるほどしかないですよね。一方、最新のモノはデパートやスーパーのほかに、コンビニ、家電量販店、ファストファッション、外食チェーンなどのロゴがたくさん掲載されている。
竹内: 情報を増やさなければいけない、というニーズにどのように応えればいいのか。文字を増やせばいいと思われるかもしれませんが、そうすると分かりにくくなる。例えば、コンビニの「セブン-イレブン」をそのまま掲載すると、文字数が多いので、地図だとどうしても分かりにくくなるんですよね。というわけで、ロゴを掲載することにしました。
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