紙の地図はどう変わったのか? 銀行のロゴが消えた理由:水曜インタビュー劇場(令和初日公演)(5/6 ページ)
とうとう平成の時代が終わった。この30年を振り返ると、就職氷河期があったり、携帯電話が普及したり。さまざまな出来事があったが、記者が注目しているのは「紙の地図」である。昭和から平成にかけて、どのような変化があったのか。地図を作製している昭文社の担当者に聞いたところ……。
銀行のロゴを掲載しない理由
竹内: ドイさん、凡例を見ていて、気になったことはありませんか?
土肥: えーと……。あっ、外資系のカフェはロゴがないですよね。代わりにコーヒーカップが掲載されています。本社から許可がおりなかったわけですね。苦労がうかがえます。
竹内: それもあるのですが、銀行のロゴがないですよね。
土肥: あ、確かに。銀行を意味する地図記号を掲載していますね。
竹内: 平成に入って、銀行名はコロコロ変わりました。A銀行とB銀行が合併すると、AB銀行になって、さらにC銀行と合併すると、ABC銀行になるといったケースがありました。そうすると、銀行名がどんどん長くなって、地図で表記することが難しくなったんですよね。
「銀行名が長いから」という理由で勝手に短くするわけにはいかないので、先方の了承をいただかなければいけません。そうした作業を繰り返すうちに、社内から「銀行の地図記号でいいのではないか」「各銀行のロゴはいらないのでは」という声が出てきました。
現在の行名はABC銀行なのに、1年前に発行した地図にはAB銀行と記している。それを見た利用者はどのように感じるのか。混乱するだけでなく、「この地図は古いなあ」と感じられるかもしれません。
土肥: 編集作業は面倒だし、古いと思われたらブランド価値が下がる――。この2つの理由で、銀行のロゴ掲載は止めたわけですね。
竹内: それだけではありません。私たちが生活していくうえで、銀行の重要度が下がっていったこともあるんですよね。以前に比べて、銀行の窓口に足を運ぶ機会は減っていませんか?
土肥: 減っています。最後に行ったのは、いつか思い出せないくらい。
竹内: その昔、引っ越し先を選ぶ際、「徒歩5分ほどのところに、銀行がある。便利そうだし、この物件にしよう」といった人もいたと思うんですよね。でも、いまは違います。コンビニで振り込みはできますし、スマホでも決済ができるようになりました。
家の近くに銀行がなくても、それほど不便を感じなくなりました。ここで誤解していただきたくないのは、銀行の地位が下がったといった話をしているわけではありません。地図の話でいえば、銀行に行く人が少なくなった、目印に銀行を使う人が少なくなった――。このように、以前と比べて”地図上の地位”が低くなったので、各行のロゴを使わなくなったんですよね。
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