わたし、定時で帰れるの? 残業を強制できるラインはどこか:専門家のイロメガネ(4/4 ページ)
ドラマ『わたし、定時で帰ります。』が話題になる背景には、多くの人にとって定時で帰れず残業が当たり前の状況があります。本来、残業をせずに定時で帰っていいラインとはどこにあるのでしょうか?
「上司が残っているから帰れない」状況は、本来定時で帰っても問題がないケースが多いはずです。言い出しにくければ「今日はこの業務が終われば、進捗状況として問題ないでしょうか?」と確認するなど、仕事が終わったといえるラインを明確にしていくようなコミュニケーションが大切です。
「うちは固定残業制だから残業代はつかないんだよね」と言われるケースもありますが、これは誤解です。固定残業代は残業してもしなくても一定の時間分の残業代を払うという契約上の話。固定残業代に相当する時間数を超えて残業をすれば残業代も支払われますし、仕事が終わっていれば定時で帰って問題はありません。
タイムカードを打った後の残業や、持ち帰りなどのサービス残業を強制されることは完全な違法行為です。
「仕事が終わらなくて仕方なく」と受け入れてしまうことは「残業しない人は空気が読めない」という職場の雰囲気をつくり、周りも苦しくなってしまいます。
ドラマでも「よく、そこに座っていた人いたでしょ。あの人死んだよ」と過労死についてふれるシーンがありましたが、2017年度に労災認定された過労死は92件、過労自殺は98件にものぼっています(「過労死等の労災補償状況」厚生労働省 平成29年度)。
過労による病気やうつ病、自殺は決して他人事ではありません。心身の健康のためにも、法律に基づいて過剰な残業をきっぱり断ることは自身の身を守るためにも必要なことです。
あるべき姿に立ち返る時期
2019年4月から大企業では労働時間の上限規制がかかり、法律上でも長時間労働を防ぐ流れになりました。あるべき姿は、会社と労働者が対等な話し合いの中で、お互いを尊重しながら上限時間と残業ルールを定めていること、そして実際にその範囲で運用されている状態です。
ただ、労働時間だけ短くして人員も業務量も変わらないのでは、仕事が終わらない、社員が成長しない、現場や管理職が疲弊する、といった結果を招くことに。これでは働き方改革も進みません。
最近では生産性という言葉をよく聞くようになりましたが、「どうしたら残業せずに必要な利益を上げられるか」現場の声も聞きながら、不要な業務はなくしたり、テレワークや時差出勤など柔軟な勤務ができる制度を整備したり、営業時間やサービス内容を見直したり、といった施策もセットで検討することが企業に求められています。
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