未払い残業代を取り戻せ! あなたにもできる「ブラック企業との戦い方」:働き方改革関連法施行後の「自己防衛術」(1/6 ページ)
働き方改革関連法の施行は、これまでただ働きしてきたサービス残業による未払い残業代を取り戻すチャンスだ。
卒業式シーズンを迎えている。この時期によく歌われるのが人気音楽ユニット「いきものがかり」の「YELL」や「SAKURA」だ。その「いきものがかり」が所属する芸能事務所「キューブ(東京都渋谷区)」が、2月14日、残業代の未払いで渋谷労働基準監督署から是正勧告を受けていたことが明らかになった。
報道によると、20代の男性社員は裁量労働制を適用され、月200時間を超える残業をしたこともあったが、労基署は違法適用と認定。1月18日、未払い残業代を支払うようにとキューブに勧告した。男性は給与が減る異動を拒否し、上司から「業界ではこの働き方が当たり前で嫌ならやめた方がよい」と言われ、2018年12月末に事務所を解雇されたという。
続出する「残業代未払い」の摘発
昨年から今年にかけて有名・大手企業に対する労基署の残業代未払いの摘発が相次いでいる。18年3月にはJR西日本が全社員の4割にあたる1万4200人に対し、未払い残業代約19億9000万円を支払うと発表したが、これも天満労働基準監督署の是正勧告を受けての措置だった。
今年1月24日には自動車メーカーのスバルが社員3421人に計7億7000万円の残業代を支払っていなかったことが発覚した。群馬製作所の男性社員(当時46歳)の過労自殺をきっかけに太田労働基準監督署が調査したところ残業代未払いが判明し、是正勧告を出した。その後のスバルの調査で社員の残業時間を把握していなかった実態が明らかにされた。
大手企業に対する労基署の摘発の背景にあるのが4月1日から施行される労働基準法改正による「罰則付き時間外労働の上限規制(関連記事を参照)」だ(中小企業は20年4月1日施行)。昨年の法律改正の国会審議などを通じて日本企業の長時間労働体質が改めてクローズアップされ、厚生労働省をはじめ労基署の違法残業の取り締まりが強化された。とくにこれまで常態化していたサービス残業にも積極的にメスを入れるようになり、4月の法律施行をスムーズにスタートさせるための露払いをするように労基署が監視の目を光らせている。
法律の施行は、これまでただ働きしてきたサービス残業による未払い残業代を取り戻すチャンスでもある。なぜなら、職場の暗黙の了解で残業時間を過少申告することが許されず、残業時間の上限規制によって企業は今まで以上に社員の労働時間の把握を厳しく迫られることになるからだ。そのためにも社員自身が働いた時間をしっかりと自己管理することが求められる。
では残業代を自己防衛するにはどうすればよいのか。何よりも大事なのは、新しい法律の内容を知ることである。
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