現役フランチャイズオーナーが教える、FC加盟のリアル:専門家のイロメガネ(3/4 ページ)
FC加盟して脱サラ、起業する。加盟店会議では、予定した収益を大きく下回る加盟店から本部を非難、糾弾する怒号が飛び交うこともある。しかし、FC加盟でいったい「何を買っているのか?」を考えると、オーナーの責任も見えてくる。
FC加盟による「厳しさ」というメリット
ここでは飲食店に的を絞って、FCで開業した場合の現場の姿をお伝えしよう。経営管理のためのどんな仕組みが提供されるのだろうか。
例えば、飲食店にはアルバイトスタッフが多く、おしぼりでテーブルを拭いてしまう不衛生な個人店を見かけることもあるだろう。店主が衛生にいくら気をつかっても、現場の末端までそれを徹底させることは極めて難しい。
それを仕組みで改善するために、飲食FCの現場で使用する布巾(ふきん)には3種類の色がある。それぞれが食器、テーブル、調理器具と、使用する対象が分かれている。こうした細かな仕組みによって、不慣れなアルバイトスタッフでも最低限の衛生管理を可能にしている。
別の飲食FCで年に数回行われる、抜き打ちの厳しい衛生管理の検査もそうだ。
恥ずかしながら筆者の経営する店舗は、かつてその検査で備品の不都合を指摘され、その時点でその日の営業を自主的に終了し、深夜まで改善のためにすべての備品の点検整備を行った上で、なんとか翌日の営業を許されたという経験もある。
約半日の売り上げがパーになったその措置は、経営者としては非常に大きな痛手であった。しかしこれによって忙しさにかまけて後回しになりがちな衛生管理を、確実に行えるようになっているのだ。
ほかにも、個人で飲食店を開業した場合には多忙でおろそかになりがちな現場業務の多くを、FCのシステムがカバーしてくれる。
それは、一定のペースでスタッフの検便を行ったり、他店の事例から適正な人件費率を設定し、ABC分析(売れ筋商品の見極め)によってメニューの改定を行ったり、アルバイトスタッフの給与計算を管理するなど、料理の提供と接客という飲食店の主業務以外のほとんどにわたる管理業務である。
これら諸々の経営管理は強力なツールではある。しかし実務では経営者自身のかじ取りがすべてだ。
加盟店で働くスタッフは自社の従業員であり、FC本部の社員ではない。ほとんどのFC本部にはスーパーバイザー(SV)がいて加盟店やそのスタッフの運営指導までしてくれるが、あくまで加盟店側にとっては社外の従業員である。
赤字の加盟店が、本部にSVの指導力不足を訴えるケースは少なくないが、実はそこには自ずと限界がある。自社スタッフの管理はやはり事業主が行わなければならない。
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