完敗としか言いようがない日産の決算:池田直渡「週刊モータージャーナル」(5/5 ページ)
ズタズタの決算内容だった日産。一つの要因は、北米で販売促進費用(インセンティブ)をつぎ込んで売り上げを伸ばそうとしたことにあるのではないか。対策として、22年にはモデルラインアップの半数を電動化車両にするというがバッテリー供給は大丈夫か。20車種の新型を出すというのも、短期間で作られる新車は大丈夫なのか?
これから3年のロードマップ
ではその魅力あるクルマとしてどんな隠し球を持っているのかと注目していると、その説明に出てくるのは、CASE(Connected:コネクティッド、Autonomous:自動運転、Shared/Service:シェア/サービス、Electric:電動化の頭文字)だった。その筆頭が日産が「ニッサン・インテリジェント・モビリティ」と呼ぶ高速道路での半自動運転を可能にするシステムである。
さらに電動化ももっと進めるのだそうで、22年にはグローバルでモデルラインアップの3割を電動化車両にするという。まあ電動化といっても、ほとんどは電気自動車(EV)ではなく日産がe-POWERと呼ぶハイブリッド(HV)だと思われるが、言うは易く行うは難しで、性能と安全性が確かなバッテリーを果たして150万台分も供給可能なサプライヤーがあるのだろうか?
トヨタは17年の実績で約140万台のHVを生産しているが、調達部門はHVに使うバッテリーの確保に必死なのだ。EVのバッテリー容量はHVの数十倍なので、EVにも力を入れたい日産の場合、より確保が厳しい。
前後にハイパワーモーターを搭載した四駆のハイパフォーマンスカーなども考えていると西川社長は言う。イメージリーダー的なモデルが必要ないとはいわないが、普通にショールームに並べるクルマはどうなのだという問いに対しては22年までに基幹車種の全て、20車種について新型車を投入するのだそうだ。
長らく放置して、古くなった商品ラインアップを刷新するためにやむを得ないのは分かるが、果たしてそうやって短期集中でリリースするクルマが、日産のブランド価値を再興できるものになるのかどうか、不安は拭いきれない。
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