なぜ日産は「技術」をアピールして、「ぶっ壊せ」と言えないのか:スピン経済の歩き方(3/6 ページ)
日産の業績が悪化している。「ゴーン前会長のことがあったから仕方がないでしょ」と思われている人が多いかもしれないが、筆者の窪田氏はちょっと違うところが気になるという。それは、同社のCM「ぶっちぎれ、技術の日産」というコピーだ。
明日をつくる技術の東芝
国民的アニメ『サザエさん』のスポンサーを長く続けてきた同社は30年以上前からCMや広告で「明日をつくる技術の東芝」とうたい、日産どころではないほどの「技術自慢」をしていたが、フラッシュメモリーの発明で知られ、技術力に定評のある東芝メモリを売却し、PC事業からも撤退するなどして、今や自慢できるのは、リチウム電池などに限られている。
要するに、「技術の東芝」なんて感じでふんぞり返っているうちに、時代の変化に取り残されて、社員に利益のかさ上げを無理強いするほど、落ちぶれてしまったのである。
神戸製鋼も分かりやすい。Webサイトでいまだに『実は世界一・日本一を誇るものがいくつもある、KOBELCOの技術・製品。』とアピールしていることからも分かるように、同社もやはり30年以上、「技術の神戸製鋼」をうたってきた。
しかし、そのような勇ましいかけ声の横で、十数年前から現場ではせっせっと検査データの不正が続けれていたのはご存じの通りだ。また、神戸製鋼同様、世界に「日本の技術力」を知らしめてきたIHIも然りである。
「技術をもって社会の発展に貢献する」という経営理念を抱く同社は、Webサイトにも「進化を続ける世界一の技術」とうたっていた。が、残念ながら5月、過去10年で国内航空会社向けに整備したエンジンの75%にあたる34台で検査不正が見つかったと発表した。
ほかにも、三菱マテリアル、東レ、KYB、スバル、三菱自動車など例を出したらキリがない。「オレってすごいでしょ」と周囲に触れ回る勘違い男が手痛いしっぺ返しを食らうように、「技術自慢」を長年続けてきた企業でドミノ倒しのように「不正」や「改ざん」が明らかになっているのだ。
もちろん、このような「技術自慢企業の自滅」という現象は、日本だけに限った現象ではない。
例えば、日本同様に「ものづくり大国」という評価があるドイツを代表するフォルクス・ワーゲン社も、「技術」には絶対的な自信を持つ。それを象徴するのが、以下のキャッチコピーだ。
「Volkswagen. Das Auto」 (フォルクスワーゲン、これが真の車です)
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